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医療法人社団涼美会 理事長
新宿・渋谷の泌尿器科 | れいわクリニック
健康診断で腎嚢胞を指摘された方へ
健康診断のエコー検査で、腎臓に水の袋のようなものがあると言われた、という経験をお持ちの方は、意外と多いのではないでしょうか。腎嚢胞は決して珍しいものではなく、実際には心配のいらないものであることがほとんどです。ただし、一部には注意を要する病気が隠れていることもあります。この記事では、腎嚢胞について説明します。
この記事の要点
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腎嚢胞とは、腎臓の中に液体のたまった袋(嚢胞)ができている状態のことです。嚢胞が1個だけのこともあれば、左右の腎臓に数多くできることもあります。
腎嚢胞を認める病気はいくつもあり、ほとんど無害なものから、腎臓の働きに大きく影響するものまで幅があります。つまり、嚢胞が見つかったときに大切なのは、どの種類の腎嚢胞なのかを見分けることです。
代表的なものとしては、年齢とともに自然にできる単純性腎嚢胞、遺伝性の多発性嚢胞腎、腎臓の出口付近にできる傍腎盂嚢胞、透析を長く続けている方にできる嚢胞、ネフロン癆(ろう)という病気、そして結節性硬化症やフォン・ヒッペル・リンドウ病といった全身の病気に伴うものなどがあります。それぞれ、病気の性質や気をつけるべきポイントが異なります。
最も多いタイプです。50歳になると、およそ2人に1人にみられるといわれ、年齢とともに増える傾向があります。多くの場合は症状もなく、腎臓の働きにも影響しない良性のものです。健康診断や、別の病気のための検査で偶然見つかることがほとんどです。
基本的には治療は必要なく、大きさが変わらないか、時折超音波検査で確認する程度の経過観察で問題ありません。ただし、嚢胞のなかに壁の厚い部分や、石灰化、内部の濁りなどが見られる場合には、まれに悪性の腫瘍との区別が必要になることがあります。その際には、造影CTやMRIといった検査で詳しく調べます。
腎臓の中心部、尿の集まる部分(腎盂)のすぐそばにできる嚢胞です。単純性腎嚢胞と似ていますが、できる場所のせいで尿の通り道を圧迫し、水腎症(尿が流れにくくなって腎臓が腫れる状態)を起こすことがあります。そのため、診断のときには尿の流れが妨げられていないか、結石を伴っていないか、といった点を確認します。水腎症がなく、腎臓の働きも保たれていれば、経過観察で問題ないことが多いです。
多発性嚢胞腎と聞いてまず思い浮かべるのが、このタイプです。両方の腎臓に多数の嚢胞ができ、時間とともに嚢胞が大きくなって、腎臓の働きが少しずつ低下していく遺伝性の病気です。親から子へ、2人に1人の確率で受け継がれることがあります。
この病気で、特に注意が必要なポイントが3つあるといわれています。
1つ目は、腎臓の働きの低下です。血圧が高い場合には降圧療法を行ったり、嚢胞の増大や腎機能の低下を抑える薬を使ったりして、進行をゆるやかにします。
2つ目は、脳動脈瘤です。ADPKDの方では、脳の血管にこぶ(動脈瘤)ができやすいことが知られていて、家族に脳動脈瘤による出血を起こした方がいる場合などは、特に注意が必要です。動脈瘤が破裂してクモ膜下出血を起こすと、命に関わったり、後遺症が残ったりします。
3つ目は、肝臓の嚢胞や腎臓の嚢胞への感染です。これは、日頃からの心がけと、発熱などがあった際の早めの対応が大切です。
こちらも遺伝性の病気ですが、ADPKDとは異なり、主に赤ちゃんや小さなお子さんの時期に発症する、まれな病気です。ご両親が病気の遺伝子を1つずつ持っていて、それが2つそろったお子さんに発症します。腎臓に多数の嚢胞ができる他、肝臓の線維化を伴うことがあるのが特徴です。ADPKDに比べると、発症時期が非常に早く、生命に関わるケースもあります。呼吸のサポートや、腎臓の働きが低下した場合の人工透析などが必要になることもあるため、小児の専門施設での診療が中心になります。ADPKDとARPKDは、嚢胞の見た目は似ていても、発症時期、家族歴、肝臓の変化などで見分けます。
長く透析を受けている患者さんの腎臓に、嚢胞が多数できることがあります。透析患者さんの腎臓は小さく萎縮していきますが、その中に嚢胞が生まれてきます。透析を3年以上続けた方の75%にみられるといわれており、透析期間が長い方ほど多くなる傾向があります。この嚢胞の注意点は、腎臓がんを合併することがあるという点です。嚢胞そのものは、ほとんど症状を起こしません。
主に小児や若い方で、腎臓の働きが低下していく遺伝性の病気です。嚢胞が目立つというより、腎臓の中の組織(尿細管)に変化が生じ、腎臓が少しずつ硬く縮んでいく病気で、腎臓に小さな嚢胞を認めることがあります。原因となる遺伝子の異常がいくつか報告されています。
初期には、尿の量が増える、のどが渇く、貧血、成長が遅れるといった症状が出ることがあります。タイプによって、末期腎不全に至る年齢が異なり、1歳くらいのこともあれば、10代になってからのこともあります。
現時点では病気の進行を止める治療法はなく、貧血や電解質の異常、腎臓の働きの低下による症状に対処しながら、腎臓の働きを維持する治療を行っていきます。
主に成人にみられる遺伝性の腎臓の病気で、尿細管という部分の変化が中心です。ADPKDと名前が似ていますが、嚢胞は目立たないこともあります。多くは20〜70歳代で腎臓の働きが落ちていきます。血尿や尿たんぱくなどの症状が目立たないこともあり、家族に腎臓の病気の方がいるかどうかが、診断の手がかりになります。原因となる遺伝子の種類によっては、高尿酸血症や痛風を伴うこともあります。残念ながら、この病気の進行を抑える特効薬は、まだありません。
全身の様々な臓器(脳、皮膚、心臓、腎臓など)に良性の腫瘍ができる遺伝性の病気です。腎臓にも、嚢胞や血管筋脂肪腫という良性の腫瘍ができることがあります。腫瘍が大きくなると、出血したり、腎臓の働きが低下したりすることがあるため、大きさに応じて経過を見たり、治療を検討したりします。
脳や脊髄、目の網膜、腎臓、副腎などに、腫瘍や嚢胞が起こりやすい遺伝性の病気です。腎臓では、嚢胞や腎臓がんができることがあります。腎臓がんは、この病気の方のおよそ4割にみられるともいわれ、複数のがんが繰り返しできることもあるため、定期的な検査が欠かせません。
腎臓で尿の酸を出す働きがうまくいかず、体が酸性に傾いてしまう病気で、腎臓に嚢胞を認めることがあります。骨が弱くなったり、尿路結石ができたりすることがあります。血液中のカリウムが低くなる症状に対しては、カリウムを補う治療を行います。
最初のステップは、お話を聞くことです。特に大切なのが、ご家族に腎臓の病気や透析を受けている方、脳出血(クモ膜下出血)を起こした方、腎臓がんになった方がいないか、という点です。遺伝性の病気では、家族歴が診断のいちばんの手がかりになることがあります。また、これまでの尿検査や血液検査で、腎臓の働きの低下を指摘されたことがあるかも確認します。
超音波検査は腎嚢胞の診断で最も基本となる検査です。体への負担も少なく、嚢胞の数、大きさ、壁の様子、中身などを確認できます。単純性腎嚢胞では、薄い壁と均一な内容の丸い嚢胞が確認されます。多数の嚢胞がある場合には、腎臓全体の大きさや嚢胞の分布から、病気の種類を推測します。
また、嚢胞の壁が厚い、内部に不規則な部分がある、石灰化が見られるといった場合には、悪性の腫瘍との区別のために、造影CTやMRIを行います。遺伝性の病気が疑われる場合にも、嚢胞の数や大きさ、肝臓など他の臓器の状態を詳しく調べる目的で行うことがあります。また、ADPKDでは、脳の血管の状態を調べるために、頭部のMRI検査を行うこともあります。
血液検査・尿検査では、腎臓の働き、電解質、血液が酸性に傾いていないか、尿たんぱくや血尿がないかなどを調べます。嚢胞があっても腎臓の働きが保たれているか、既に低下しているかは、治療方針や見通しに大きく関わります。
ネフロン癆やADTKDなど、遺伝性の病気が疑われる時には、原因となる遺伝子を調べる検査を検討することがあります。実施できる施設や、検査の意味合いは病気によって異なりますので、担当の医師とよく相談しながら進めます。
単純性腎嚢胞・傍腎盂嚢胞の場合、症状がなく、腎臓の働きにも影響していない場合には、基本的に治療は必要ありません。年に1回程度の健診や、エコー検査で、大きさが変わらないかを確認していく経過観察で十分なことがほとんどです。嚢胞が大きくなって、腰や背中の痛み、お腹の張り、血圧の上昇、尿の流れの悪化などの症状が出てきた場合には、治療を考えます。
方法としては、針を刺して中の液体を抜く方法に、嚢胞の壁を固める薬剤を注入する処置を加える方法や、内視鏡(腹腔鏡)で嚢胞の壁を切り取る手術があります。どの方法が適しているかは、嚢胞の大きさや場所、体の状態などをふまえて、医師と相談しながら決めていくことになります。
多発性嚢胞腎(ADPKD)の場合、根本的に病気を治す治療はまだありませんが、進行を緩やかにしたり、合併症を予防したりすることが重要です。腎臓の働きの低下に対しては、血圧の管理と、条件を満たす場合にはトルバプタンなどの治療を行います。脳動脈瘤に対しては、定期的な頭部MRIでの確認を行い、見つかった場合には、破裂のリスクを評価して治療方針を決めます。嚢胞や肝臓への感染に対しては、普段の健康管理と、発熱や腹痛が出たときの早めの受診が大切です。腎臓の働きが大きく低下した場合には、透析や腎移植を検討することになります。
透析患者さんの嚢胞の場合、嚢胞自体に治療は必要ないことがほとんどですが、腎臓がんの合併に注意が必要です。定期的な画像検査を受けて、早めに見つけることが大切です。
ネフロン癆、ADTKD、結節性硬化症、VHL病、遠位尿細管アシドーシスなどでは、腎臓の働きを保つための管理を中心に、貧血や電解質異常、尿路結石などの症状への対処を行います。腫瘍を伴う病気では、定期的な画像検査で早期発見を心がけます。専門の施設で、腎臓内科、小児科、脳神経外科、遺伝診療部門などと連携しながら診ていくこともあります。
一般的な単純性腎嚢胞は良性で、症状がなく腎臓の働きにも影響がなければ、治療を必要としないことがほとんどです。ただし、嚢胞の形状や検査結果によっては詳しい検査が必要な場合もあります。健康診断で指摘された際は、医師に確認することをおすすめします。
一般的な単純性腎嚢胞は良性であり、通常はがん化するものではありません。ただし、嚢胞の壁が厚い、内部に不規則な部分があるなどの場合は、腎臓がんとの区別が必要になることがあります。必要に応じて造影CTやMRIなどで詳しく調べます。
嚢胞が大きくなったからといって、必ず手術が必要になるわけではありません。腰や背中の痛み、尿の流れへの影響などがある場合には治療を検討します。嚢胞の大きさや位置、症状に応じて、穿刺・硬化療法や腹腔鏡手術などが選択されることがあります。
腎嚢胞は自然に消えるとは限らず、大きさがほとんど変わらないまま経過することもあります。症状がなく腎機能への影響もなければ、治療を必要としないことが多いため、嚢胞の性状や症状に応じた判断が大切です。
一般的な単純性腎嚢胞の多くは遺伝性ではありません。一方、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)など、遺伝が関係する病気もあります。ご家族に腎臓の病気や透析を受けている方がいる場合は、診察時に医師へ伝えることが大切です。
腎嚢胞については泌尿器科や腎臓内科で相談できます。嚢胞の種類や腎臓の働きを確認し、必要に応じて超音波検査、CT・MRI、血液検査や尿検査などを行います。
腎嚢胞のほとんどは心配のいらないものです。症状がなければ、多くの場合は治療も必要なく、定期的な経過観察だけで済みます。ただし、腎臓の働きが少しずつ低下していく遺伝性の病気や、腎臓がんなどの腫瘍と関わる病気が隠れていることもあります。適切な診断を受けることで、安心して日常生活を送ることにつながります。
腎嚢胞の診断と鑑別:本田謙次郎;腎と透析 89巻 4号 pp. 506-509(2020年10月)