残尿感を起こす病気は、男女で顔ぶれが変わります。代表的なものを順に見ていきます。
膀胱炎
膀胱に細菌が入り込んで炎症を起こす病気で、女性に圧倒的に多く見られます。尿道が短く、肛門との距離が近いという体の構造が理由です。
米国のデータでは女性のおよそ40%が生涯に一度は尿路感染症を経験し、年間では約10%が罹患するとされます。排尿時の痛み、頻尿、残尿感、下腹部の不快感、尿の濁りが典型的な組み合わせです。
抗菌薬を飲み始めれば2〜4日で症状が引くことが多い一方、一度かかった人の約半数が1年以内に再発するという特徴もあります。
前立腺肥大症
前立腺は膀胱の出口で尿道を取り巻いており、加齢とともに大きくなります。50歳を超えた男性の約半数に前立腺肥大の所見があり、年齢が上がるほど割合も増えていきます。
肥大した前立腺が尿道を圧迫すると尿の勢いが落ち、出始めに時間がかかり、出し切れずに尿が残ります。夜中に何度も起きる、勢いが弱いといった訴えとセットで現れやすい病気です。
前立腺炎
前立腺に炎症が起きる病気で、50歳未満の男性では最も多い泌尿器の診断名です。20〜50歳の男性の約5%が経験すると推定されています。
会陰部(肛門と陰嚢の間)や下腹部、性器周辺の痛みが中心で、射精時の痛みを含む骨盤の痛みは患者の約7割が訴えます。残尿感や尿の勢いの低下といった排尿の症状を伴うことも珍しくありません。
尿道炎・性感染症
クラミジアや淋菌などによる尿道の炎症です。排尿時の痛みと尿道からの分泌物が代表的な症状で、尿道の違和感が残尿感として自覚されることがあります。
淋菌では黄緑色の膿のような分泌物が出るのに対し、クラミジアでは透明から白っぽい少量の分泌物にとどまり、痛みだけが目立つことも多いという違いがあります。
症状が軽くても放置すると精巣上体炎などに広がるため、心当たりがあれば早めの検査が必要です。
過活動膀胱
膀胱が自分の意思とは無関係に収縮してしまう状態で、感染がないのに強い尿意が急に襲ってくるのが特徴です。
国際禁制学会は、尿意切迫感を中心に頻尿や夜間頻尿を伴い、感染やほかの明らかな病気がない状態と定義しています。
膀胱が十分に溜まる前に尿意が出るため、少量しか出ないまま「まだ残っている」と感じやすくなります。
尿路結石
腎臓でできた石が尿管を下り、膀胱の出口近くまで来ると、膀胱を刺激して頻尿や残尿感を引き起こします。膀胱の中にできる結石も同じです。
石が尿の通り道をふさぐと、わき腹の痛み、血尿、排尿量の減少といった症状が加わります。膀胱に結石ができている場合、その裏で尿を出し切れていない状態が続いていることを示唆します。
膀胱炎以外に考えられる病気
尿道が瘢痕で細くなる尿道狭窄、膀胱の粘膜が慢性的に炎症を起こす間質性膀胱炎、脳卒中やパーキンソン病、脊髄の病気などによる神経因性膀胱も残尿感の原因になります。
頻度は高くありませんが、膀胱がんや前立腺がんが排尿の異常として見つかることもあり、血尿を伴う場合は特に注意してください。