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インフルエンザとは?初期症状・風邪との見分け方から検査・治療・予防法まで

朝晩の空気がひんやりとして、長袖が手放せなくなる10月。この時期から春先にかけては、発熱や咳で医療機関を受診する方が一年でいちばん多くなる季節です。その代表的な原因のひとつが、インフルエンザです。

この記事の要点

  • 症状:急な発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、強いだるさなどが現れます。
  • 検査と治療:迅速抗原検査などで診断し、休養・水分補給や必要に応じた抗インフルエンザ薬で治療します。
  • 予防:ワクチン接種、手洗い、咳エチケットなどが大切です。

目次 [ 表示 ]

1. はじめに

朝晩の空気がひんやりとして、長袖が手放せなくなる10月。この時期から春先にかけては、発熱や咳で医療機関を受診する方が一年でいちばん多くなる季節です。その代表的な原因のひとつが、インフルエンザです。

「急に38℃を超える熱が出た。これはただの風邪?それともインフルエンザ?」「新型コロナとはどう違うの?」「検査はいつ受ければいいの?」「薬は飲んだほうがいいの?」「会社や学校はいつから行っていいの?」。発熱したとき、こうした疑問が次々に浮かんでくる方は多いのではないでしょうか。

インフルエンザは毎年のように流行する身近な感染症ですが、普通の風邪とは違い、高齢の方や持病のある方、小さなお子さんでは肺炎や脳症などの重い合併症につながることがあります。一方で、多くの方は適切に休養をとれば1週間ほどで回復する病気でもあります。必要以上に怖がらず、しかし油断もしないためには、病気の正しい知識を持っておくことが何よりの備えになります。

また、近年は流行の始まりが早まる傾向があり、夏の終わりや秋口からインフルエンザが広がる年もみられるようになりました。「まだ冬ではないから」と考えず、季節を問わずに知っておいていただきたい病気です。

この記事では、インフルエンザの基本を、ウイルスの「型」の違い、初期症状と発症の流れ、風邪や新型コロナとの見分け方、検査と診断、治療薬、そして学校や職場を休む期間の目安まで、順を追って解説します。

2. インフルエンザとはどんな病気?

インフルエンザウイルスによる感染症

インフルエンザウイルスの電子顕微鏡画像

出典:CDC Public Health Image Library

インフルエンザは、インフルエンザウイルスがのどや鼻、気管支などの気道に感染して起こる病気です。

普通の風邪の多くは、ライノウイルスやアデノウイルスなど、さまざまなウイルスによって起こる感染症で、のどの痛みや鼻水、くしゃみ、咳といった症状が中心です。熱が出ても比較的軽く、全身の症状はあまり強くありません。

これに対してインフルエンザは、38℃以上の高い熱、頭痛、関節や筋肉の痛み、強いだるさといった全身の症状が、急に現れるのが特徴です。厚生労働省も、インフルエンザの症状について「38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感等の症状が比較的急速に現れるのが特徴」と説明しています。

感染経路は?

インフルエンザの主な感染経路は、次の2つです。

飛沫感染:感染した人の咳やくしゃみ、会話のときに飛び散るしぶき(飛沫)に含まれるウイルスを、周りの人が吸い込むことで感染します

接触感染:ウイルスが付いた手でドアノブや手すり、スイッチなどに触れ、その場所に別の人が触れた手で口や鼻、目を触ることで感染します

人が集まる場所、換気の悪い場所、近い距離で長く会話をする場面では、感染が広がりやすくなります。学校や職場、家庭内で一気に広がりやすいのはこのためです。

潜伏期間と、人にうつす期間

ウイルスが体に入ってから症状が出るまでの潜伏期間は、通常1〜3日ほどです。風邪に比べて潜伏期間が短く、家族の一人がかかると、数日のうちに次々と発症することも珍しくありません。

注意したいのは、人にうつす可能性がある期間です。一般に、インフルエンザは発症の前日から、発症後3〜7日ほどの間、鼻やのどからウイルスを出しているとされています。熱が下がったあとも、しばらくはウイルスを出していることがあるため、「熱が下がったからもう大丈夫」とすぐに外出するのは控えましょう。後ほど詳しく説明する、学校の出席停止の期間が「解熱した後2日」と決められているのも、こうした理由からです。

なぜ毎年のように流行するのか

「一度かかったのに、また次の年もかかった」という経験をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。インフルエンザウイルスは、表面の構造を少しずつ変化させながら毎年流行します。そのため、以前にかかったり、ワクチンを接種したりして得た免疫が、翌年のウイルスには十分に働かないことがあります。

また、インフルエンザウイルスにはいくつかの「型」があり、型が違えば免疫も別々です。同じシーズンのうちに2回かかる方がいるのも、このためです。次の章で、この「型」の違いを詳しく見ていきます。

3. インフルエンザの「型」の違い

A型・B型・C型の3つ

ヒトに感染するインフルエンザウイルスには、大きく分けてA型、B型、C型があります。このうち、毎年冬を中心に大きな流行を起こすのはA型とB型です。医療機関で「インフルエンザA型です」「B型です」と説明されるのは、この区別によるものです。

A型の特徴

A型は、流行の規模が大きくなりやすい型です。ヒトだけでなく、鳥やブタなどの動物にも感染するのが特徴で、ウイルスの表面にある2種類のたんぱく質(HとN)の組み合わせによって「H1N1」「H3N2」などの「亜型」に分けられます。現在、ヒトの間で季節的に流行しているのは、主にH1N1(2009年に新型インフルエンザとして世界的に流行したもの)と、H3N2(いわゆる香港型)の2つです。

A型は変異を起こしやすく、数十年に一度、それまでヒトの間で流行していなかったまったく新しいタイプのウイルスが現れて、世界的な大流行(パンデミック)を起こすことがあります。

症状としては、急な高熱と、関節痛や筋肉痛、強いだるさなどの全身症状がはっきり出ることが多いとされています。

B型の特徴

B型は主にヒトの間で流行するウイルスで、A型ほど大きく姿を変えることはありません。例年、A型の流行が落ち着いたあとの年明けから春先にかけて増えてくることが多く、「冬の終わりから春にかけてのインフルエンザ」として知られています。

B型では、A型に比べて熱がそれほど高くならないことや、腹痛や下痢などの消化器の症状が目立つことがあるともいわれます。ただし、これはあくまで傾向で、B型でも高熱が出ることはよくあります。症状だけでA型かB型かを見分けることはできません。

なお、B型にはこれまで「ビクトリア系統」と「山形系統」の2つの系統がありましたが、山形系統は2020年以降、世界的に検出されていません。

C型の特徴

C型は、主に小さなお子さんがかかるウイルスで、症状は鼻水などを中心とした軽い風邪のようなものにとどまることがほとんどです。一度かかると免疫が長く続くため、大人になってから問題になることはあまりありません。季節的な大流行を起こすこともなく、一般的な医療機関の迅速検査でも調べる対象にはなっていません。

4. インフルエンザの初期症状と発症の流れ

典型的な経過

多くの場合、寒気やゾクゾクする感じから始まり、数時間のうちに38℃以上、ときには39〜40℃の高熱が出ます。同時に、頭痛、関節や筋肉の痛み、体が重く起き上がれないほどのだるさが現れ、「朝は普通に元気だったのに、夕方には寝込んでいた」というように、発症の時刻がはっきり言えるほど急に悪くなるのが特徴です。2〜3日目になると、全身の症状に加え、のどの痛み、咳、鼻水などが目立ってきます。高い熱は3〜5日ほど続くことが一般的で、4〜7日目ごろには熱が下がるとともに全身の症状も軽くなり、多くの方は1週間前後で回復に向かいます。ただし、咳やだるさは、熱が下がったあとも1〜2週間ほど残ることがあります。

インフルエンザの主な症状|発熱・頭痛・関節痛・筋肉痛・強いだるさ

初期症状のチェックポイント

次のような症状がそろっている場合は、インフルエンザの可能性を考えましょう。

急に38℃以上の熱が出た

寒気、ふるえがある

関節や筋肉が痛い、体の節々が痛む

頭痛がある

強いだるさで、起き上がるのもつらい

家族や職場、学校などで、周りにインフルエンザの人がいる

とくに最後の「周りに同じ症状の人がいる」という情報は、医師が診断するうえでも大切な手がかりになります。

症状が典型的でないこともある

一方で、すべての方が教科書どおりの症状になるわけではありません。高齢の方では熱があまり上がらず、「なんとなく元気がない」「食欲が落ちた」「ぼんやりしている」といった目立たない症状だけのこともあります。また、ワクチンを接種している方では、症状が比較的軽く済むこともあります。

お子さんの場合は、吐き気や嘔吐、腹痛、下痢などの消化器の症状が出ることもあります。熱の高さだけで判断せず、いつもと様子が違うときは早めに相談してください。

注意したい合併症

インフルエンザは多くの場合自然に回復しますが、まれに次のような合併症を起こすことがあります。

肺炎:インフルエンザウイルスそのものによる肺炎と、インフルエンザで弱った気道に細菌が感染して起こる肺炎があります。いったん下がった熱が再び上がる、咳や息苦しさが強くなるといった場合は注意が必要です

インフルエンザ脳症:主に小さなお子さんにみられる重い合併症で、けいれん、意識がはっきりしない、普段の様子とは違った意味不明な言動などがみられます

65歳以上の方、5歳未満のお子さん、妊娠中の方、持病のある方、免疫の働きが低下している方などは、こうした合併症を起こしやすいことが知られています。

5. 普通の風邪や新型コロナとの見分け方


インフルエンザ・風邪・新型コロナの症状比較表

普通の風邪との違い

インフルエンザと普通の風邪の主な違いを、ポイントごとに整理すると次のようになります。

始まり方:インフルエンザは急に始まり、風邪は徐々に始まることが多い

熱:インフルエンザは38℃以上の高熱が多く、風邪は微熱から37℃台程度のことが多い

全身の症状:インフルエンザは関節痛や筋肉痛、強いだるさが目立ち、風邪ではあまり強くない

中心となる症状:インフルエンザは全身症状が先に立ち、風邪はのどの痛みや鼻水、くしゃみが中心

新型コロナウイルス感染症との違い

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症は、どちらも発熱、咳、のどの痛み、だるさなどを起こす病気で、症状だけで見分けるのは困難です。とくに近年の新型コロナでは、発症当初に強いのどの痛みや高熱が出ることも多く、インフルエンザと区別がつかないケースが少なくありません。

一般的にいわれている違いとしては、次のようなものがあります。

潜伏期間:インフルエンザは1〜3日ほど。新型コロナ(オミクロン株)は2〜3日ほどとされ、やや長めのこともある

症状の出方:インフルエンザは急な高熱と全身の痛みで始まることが多い。新型コロナは、のどの痛みや咳から始まり、熱がそれほど高くならない方もいる

味覚・嗅覚の異常:新型コロナの流行初期によくみられた症状で、近年は減っているものの、現在もみられることがある

さらに、インフルエンザと新型コロナは、同じ時期に同時に流行することがあり、まれに両方に同時にかかることもあります。どちらの病気なのかによって、使う薬や療養の目安が変わるため、「症状が似ているから同じように様子を見る」のではなく、必要に応じて検査で確かめることが大切です。

6. インフルエンザの検査と診断

一般的な「迅速抗原検査」

インフルエンザの診断で広く行われているのが、迅速抗原検査です。鼻の奥やのどを綿棒でぬぐい、その中にインフルエンザウイルスのたんぱく質(抗原)が含まれているかを調べます。10〜15分ほどで結果が出て、A型かB型かもわかります。

鼻の奥深くまで綿棒を入れる検査を「つらい」と感じる方は多いと思います。最近では、鼻の入り口に近い部分をぬぐう方法で調べられる検査キットもあり、医療機関によって採取の方法はさまざまです。

新型コロナとの同時検査

インフルエンザと新型コロナは症状だけでは見分けにくいため、1回の検体採取で両方を同時に調べられる検査キットが広く使われるようになっています。鼻を何度もぬぐわずに済むため、患者さんの負担も少なくなります。

また、一部の医療機関では、ウイルスの遺伝子を増やして調べる「核酸増幅検査(PCR検査など)」を行っているところもあります。抗原検査より感度が高く、ウイルスの量が少なくても検出しやすいのが特徴です。

受診のベストなタイミング

迅速抗原検査は便利な検査ですが、ウイルスの量が少ないと陽性になりにくいという弱点があります。発熱した直後は、体内のウイルスがまだ十分に増えていないことがあり、本当はインフルエンザなのに「陰性」と出てしまうことがあります。一般に、発熱から12〜24時間ほど経つと、陽性と判定されやすくなるといわれています。

一方で、抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に飲みはじめることで効果が期待できる薬です。つまり、早すぎても検査が陰性に出やすく、遅すぎると薬の効果が得にくいということになります。目安としては、次のように考えてください。

全身状態が落ち着いている方:発熱から半日〜1日ほど経ってから、48時間以内に受診する

重症化しやすい方、症状が強い方:時間を待たずに、早めに受診する

発熱直後の検査で陰性だった方:症状が続く場合や悪化する場合は、翌日に再受診を検討する

検査がすべてではない

インフルエンザの診断は、検査結果だけで決まるものではありません。家族や職場でインフルエンザの人がいて、急な高熱や関節痛といった典型的な症状がそろっている場合には、検査が陰性でも、医師が症状や経過、周囲の流行状況などから総合的に判断して、インフルエンザとして治療を始めることがあります。

反対に、流行期でない時期の検査陽性や、症状と合わない結果が出た場合には、慎重に判断することもあります。検査は診断を助ける大切な道具ですが、最終的には医師の診察とあわせて判断されるものと考えてください。

7. インフルエンザの治療法と主な抗インフルエンザ薬

治療の基本は「休養」

インフルエンザの治療の基本は、十分な休養と水分補給です。体にもともと備わっている免疫の力でウイルスを排除することが、回復の土台になります。

健康な大人の場合、抗インフルエンザ薬を使わなくても、多くは自然に回復します。そのうえで、症状を早く和らげたい場合や、重症化しやすい方では、抗インフルエンザ薬を使った治療を検討します。

抗インフルエンザ薬の効果

抗インフルエンザ薬は、体の中でウイルスが増えるのを抑える薬です。厚生労働省は、発症から48時間以内に服用を始めると、発熱の期間が通常1〜2日短くなり、鼻やのどからのウイルスの排出量も減るとしています。一方で、発症から48時間を過ぎてから飲みはじめた場合には、十分な効果は期待できないとされています。

とくに、高齢の方、お子さん、妊娠中の方、持病のある方など重症化しやすい方では、早めの治療が勧められています。

主な抗インフルエンザ薬の種類

国内で使われている主な抗インフルエンザ薬には、次のようなものがあります。使い方がそれぞれ異なり、年齢や体の状態、薬を吸入できるかどうかなどによって選びます。

【オセルタミビル(商品名:タミフル)】

飲み薬で、1日2回、5日間服用します。カプセルのほか、小さなお子さん向けの粉薬(ドライシロップ)もあり、幅広い年齢で使われています。最も古くから使われており、一番エビデンスが豊富な薬です。

【ザナミビル(商品名:リレンザ)】

吸入薬で、1日2回、5日間吸入します。専用の器具を使ってうまく吸い込む必要があるため、吸入がしっかりできる方に向いています。

【ペラミビル(商品名:ラピアクタ)】

点滴で投与する薬で、原則1回の点滴で治療します。飲み薬や吸入薬が使いにくい方に使われます。

【バロキサビル マルボキシル(商品名:ゾフルーザ)】

1回飲むだけで治療が終わる飲み薬です。ほかの薬とは異なる仕組みでウイルスの増殖を抑えます。ただし、小さなお子さんでは、薬が効きにくい「耐性ウイルス」が出やすいことが報告されており、日本小児科学会は12歳未満のお子さんへの使用には慎重な考え方を示しています。

どの薬を選ぶかは、患者さんの年齢や持病、症状の重さ、ご希望などをふまえて医師が判断します。薬によって飲み方や回数が違いますので、処方された方法を守り、症状がよくなっても決められた日数を最後まで使い切るようにしましょう。

解熱剤の使い方に注意

熱がつらいときには、解熱剤を使って体を楽にすることもあります。ただし、インフルエンザのときの解熱剤選びには注意が必要です。

インフルエンザのときに比較的安全に使えるとされているのは、アセトアミノフェン(商品名:カロナールなど)です。一方で、アスピリンやジクロフェナク、メフェナム酸など、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれる薬の一部は、お子さんがインフルエンザのときに使うと、ライ症候群やインフルエンザ脳症の悪化との関係が指摘されており、使用を避けることになっています。

市販の風邪薬や解熱鎮痛薬には、さまざまな成分が含まれています。とくにお子さんの場合は、自己判断で家にある薬を使わず、医師や薬剤師に相談してから使うようにしてください。

異常行動への注意

インフルエンザにかかったときには、急に走り出す、部屋から飛び出そうとする、意味のわからないことを言うといった「異常行動」がみられることがあります。主にお子さんや10代の方で報告されており、抗インフルエンザ薬を飲んでいるかどうかや、薬の種類に関係なく起こることがわかっています。解熱剤のアセトアミノフェンだけを飲んだ場合や、薬を飲んでいない場合でも報告されています。

厚生労働省は、少なくとも発症から2日間は、お子さんや未成年の方が一人にならないよう配慮することを呼びかけています。ご家庭では、次のような対策をとっておくと安心です。

玄関や窓の施錠を確実にする

窓に格子のない部屋や、ベランダに面した部屋で一人で寝かせない

戸建ての場合は、できるだけ1階で寝かせる

自宅での過ごし方

自宅で療養するときは、次のような点に気をつけましょう。

水分補給:高熱で汗をかくと、脱水になりやすくなります。水や経口補水液、スープなどでこまめに水分をとりましょう

安静:熱が下がっても体力は落ちています。無理をせず、しっかり睡眠をとりましょう

室内環境:適度な湿度(50〜60%程度)を保ち、ときどき換気をしましょう

食事:食欲がないときは無理をせず、おかゆやゼリーなど食べやすいものを少しずつとりましょう

家庭内での感染対策:可能であれば部屋を分け、療養中の方はマスクを着用し、タオルの共有を避けましょう

次のような場合は、早めに医療機関を受診してください。

息苦しさがある、呼吸が速い

胸の痛みが続く

いったん下がった熱が再び上がった

水分がとれず、尿がほとんど出ない

意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が鈍い

お子さんで、けいれんや意味の通らない言動がある

夜間や休日で判断に迷うときは、救急安心センター事業(#7119)や子ども医療電話相談事業(#8000)に相談する方法もあります。

8. 登校・出勤停止の期間と基準


インフルエンザの出席停止期間・登校再開の目安

学校の出席停止期間

インフルエンザは、学校保健安全法で「出席停止」の対象となる病気に指定されています。出席停止の期間は、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」と定められています。

解熱剤を使って熱を下げている間は、「解熱した」とは考えません。薬を使わずに熱が下がった状態を基準にしてください。

なお、病状により学校医やその他の医師が感染のおそれがないと認めたときは、この限りではないとされています。

大人の出勤の目安

大人の場合、季節性インフルエンザで会社を休む期間について、法律で一律に決められた基準はありません。多くの職場では、学校の出席停止期間の考え方を参考に、「発症後5日を経過し、かつ、解熱後2日を経過するまで」を目安にしていることが多いようです。

ただし、職場によって独自のルールが定められていることもありますので、勤務先の規則を確認してください。とくに、医療機関や介護施設、保育施設、食品を扱う職場など、周りに重症化しやすい方がいる職場では、より慎重な対応が求められることがあります。

前の章でお伝えしたとおり、熱が下がったあとも数日間はウイルスを出していることがあります。出勤を再開してからしばらくは、マスクの着用や手洗いなど、周りにうつさない配慮を続けましょう。

9. インフルエンザの予防法

ワクチン接種

インフルエンザの予防でもっとも基本となるのが、ワクチンの接種です。ワクチンは感染を完全に防ぐものではありませんが、発症する可能性を減らし、かかった場合の重症化を防ぐ効果があるとされています。とくに、高齢の方や持病のある方など、重症化しやすい方には接種が勧められています。

ワクチンは接種してから効果が出るまでに2週間ほどかかります。毎年流行するウイルスに合わせて中身が変わるため、毎シーズンの接種が必要です。

日常生活でできる予防

手洗い:外出から帰ったとき、食事の前などに、石けんと流水で丁寧に洗いましょう。アルコール消毒も有効です

咳エチケット:咳やくしゃみが出るときはマスクを着用し、マスクがない場合はティッシュや袖で口と鼻を覆いましょう

換気と湿度:寒い時期でも定期的に換気をし、加湿器などで適度な湿度を保ちましょう

体調管理:十分な睡眠とバランスのとれた食事で、体の抵抗力を保ちましょう

人混みを避ける:流行している時期は、とくに重症化しやすい方は、不要不急の人混みへの外出を控えましょう

家族がかかったとき

家族の誰かがインフルエンザにかかったときは、できるだけ部屋を分け、看病する人を一人に決めると、家庭内での広がりを抑えやすくなります。看病の前後には手を洗い、タオルや食器の共有は避けましょう。

同居している家族に重症化しやすい方がいる場合には、抗インフルエンザ薬を予防のために使う「予防投与」という方法もあります。ただし、予防投与は健康保険が使えない自費での扱いとなり、対象となる方や使える期間にも条件があります。希望される場合は、医師にご相談ください。

10. よくある質問(Q&A)

Q. インフルエンザにかかったら、必ず薬を飲まないといけませんか?

必ずしも必要ではありません。健康な大人の場合、十分に休養をとれば、抗インフルエンザ薬を使わなくても多くは自然に回復します。ただし、高齢の方、お子さん、妊娠中の方、持病のある方など重症化しやすい方では、早めの治療が勧められます。薬を使うかどうかは、症状やご希望をふまえて医師と相談して決めましょう。

Q. 発症から48時間を過ぎてしまいました。もう受診しても意味がありませんか?

意味はあります。48時間を過ぎると抗インフルエンザ薬の効果は得にくくなりますが、症状が重い場合や重症化しやすい方では、医師の判断で薬を使うこともあります。また、肺炎などの合併症が起きていないかを確認することも大切です。息苦しさや胸の痛み、再び熱が上がったなどの変化があれば、早めに受診してください。

Q. A型にかかったら、そのシーズンはもうかかりませんか?

かかる可能性があります。A型とB型では免疫が別々のため、A型にかかったあとにB型にかかることがあります。また、A型の中にも複数の亜型があります。一度かかったからと安心せず、シーズンを通して手洗いなどの予防を続けましょう。

Q. 熱が下がったら、すぐに学校や会社に行ってもいいですか?

熱が下がったあとも、しばらくはウイルスを出していることがあります。学校の場合は「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」が出席停止の期間です。大人も、この期間を目安にするとよいでしょう。

Q. 市販の風邪薬を飲んでもいいですか?

大人の場合、症状を和らげる目的で使うことはありますが、インフルエンザそのものを治す薬ではありません。とくにお子さんの場合は、解熱鎮痛薬の成分によっては使用を避けるべきものがあります。インフルエンザが疑われるときは、自己判断で市販薬を使う前に、医師や薬剤師に相談してください。

Q. 抗インフルエンザ薬を飲めば、人にうつさなくなりますか?

薬を飲むとウイルスの排出量は減りますが、すぐに人にうつさなくなるわけではありません。薬を飲んで熱が早く下がっても、決められた療養の期間はしっかり守り、周りへの感染対策を続けましょう。

11. まとめ

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって起こる感染症で、急な高熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、強いだるさといった全身の症状が急に現れるのが特徴です。毎年流行するのはA型とB型で、型が違えば免疫も別のため、同じシーズンに2回かかることもあります。

普通の風邪や新型コロナとは、症状だけで見分けるのが難しいことも少なくありません。どの病気かによって使う薬や療養の目安が変わるため、必要に応じて検査で確かめることが大切です。検査は、発熱から半日〜1日ほど経ってからのほうが正確に判定しやすい一方で、抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に始めることで効果が期待できます。重症化しやすい方や症状が強い方は、時間を待たずに早めに受診してください。

治療の基本は十分な休養と水分補給です。抗インフルエンザ薬にはいくつかの種類があり、年齢や体の状態に合わせて選びます。お子さんでは解熱剤の選び方と、発症から少なくとも2日間の異常行動に注意しましょう。熱が下がったあとも、しばらくはウイルスを出していることがあります。学校や職場への復帰は、「発症後5日」かつ「解熱後2日」を目安にしてください。

インフルエンザは身近な病気ですが、正しい知識があれば、慌てずに対処することができます。急な発熱で不安なときは、ひとりで抱え込まずにご相談ください。

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参考文献・参考URL

1. 厚生労働省「令和8年度冬季 急性呼吸器感染症(ARI)総合対策に関するQ&A」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2026.html

2. 厚生労働省「インフルエンザ(総合ページ)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/index.html

3. 国立健康危機管理研究機構(JIHS)感染症情報提供サイト「インフルエンザ」

https://id-info.jihs.go.jp/diseases/a/influenza/index.html

4. 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について(療養期間の考え方等)」

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001093929.pdf

5. 厚生労働省 報道発表資料(2001年5月30日):インフルエンザに伴う発熱に対する解熱剤の使用について

https://www.mhlw.go.jp/houdou/0105/h0530-4.html

6. 日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会「インフルエンザ治療・予防指針」

https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=655

11. この記事の監修・執筆医

インフルエンザの記事を監修・執筆した医療法人社団涼美会 理事長 関口知秀医師

医療法人社団涼美会理事長

関口 知秀

皮膚科・形成外科をはじめ、幅広い診療に携わる医師。
本記事では、インフルエンザの初期症状や風邪・新型コロナとの違い、検査・治療・予防方法について、患者さまにわかりやすく解説しています。
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