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生まれつき皮膚にある色の違い、成長とともに目立ってきた斑点、いつの間にかできていた青い痕──「あざ」と一口に言っても、その正体はさまざまです。この記事では、あざの基本的な仕組みから、黒あざ・茶あざ・青あざ・赤あざそれぞれの特徴、自然に消えるかどうかの見分け方、医療機関を受診したほうがよいサインまでを、患者様向けに分かりやすく整理しました。ご自身やお子様のあざが気になっている方の判断の目安としてお役立てください。
この記事の要点
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あざの色の違いは原因となるものの種類と存在している深さで決まります
あざとは、皮ふの一部の色が周囲と異なって見える状態を指す一般的な呼び名です。医学的には「母斑(ぼはん)」や「血管腫(けっかんしゅ)」などと呼ばれ、皮ふに含まれる色素細胞(メラノサイト)や血管が、生まれつき、あるいは後天的に増えたり、通常とは異なる場所や深さに分布したりすることで生じます。
あざの色の違いは、原因となるものの種類と、それが皮膚のどの深さに存在するかで決まります。
皮膚は表面から順に、表皮・真皮・皮下組織という層構造になっており、同じメラニン色素でも存在する深さによって、目に映る色が変わります。
同じ「色素のあざ」であっても、深い位置にあるものほど青みを帯びて見えるという光学的な性質があり、これが青あざと茶あざを分ける理由です。
この深さの違いは、後述する自然消退(自然に時がたてば消えてしまうこと)のしやすさや治療の難易度にも関係してきます。
私たちは一般的に、ぶつけたときにできる皮下出血(内出血)のことも「青あざ」と呼びます。
これは血管が破れて血液が皮膚の下にたまった状態であり、赤紫色から青、緑、黄色へと色を変えながら、通常1〜2週間程度で自然に消えていきます。
一方、母斑(ぼはん)や血管腫(けっかんしゅ)としてのあざは、皮ふの構造そのものの変化によるもので、数週間で消えることはありません。
「色が変化しながら短期間(2週間くらい)で消えるまたは薄くなるかどうか」が、両者を見分けるおおまかな目安になります。
多くのあざは、胎児期に皮膚がつくられる過程で、細胞の分布や分化にわずかなずれが生じることによって発生すると考えられています。
近年では、体細胞の遺伝子に生じた偶発的な変化が関与していることも明らかになってきました。
重要なのは、あざは妊娠中の食事や生活習慣、転倒、ご家族の育て方などが原因でできるものではないという点です。
そのため、ご自身やご家族を責める必要はまったくありません!
多くのあざは健康上の害を及ぼしませんが、一部には外見上での配慮が必要なもの、全身の病気と関連するものもあるため、正しい診断を受けることが大切です。
あざは、見た目の色によって大きく黒あざ・茶あざ・青あざ・赤あざの4つに分けられます。それぞれに代表的な疾患名があり、経過や治療方針も異なります。まずは全体像を表で確認しておきましょう。
| 色による分類 | 代表的なあざ(医学的名称) | 原因となるもの | 自然消退 |
|---|---|---|---|
| 黒あざ | 色素性母斑(しきそせいぼはん)、先天性色素細胞母斑(せんてんせいしきそさいぼうぼはん) | 真皮内に集まった母斑細胞(ぼはんさいぼう) | しない |
| 茶あざ | 扁平母斑(へんぺいぼはん)、カフェオレ斑、ベッカー母斑 | 表皮のメラニン増加 | しない |
| 青あざ | 蒙古斑(もうこはん)、異所性蒙古斑、太田母斑、伊藤母斑 | 真皮深部の色素細胞 | 種類による |
| 赤あざ | 乳児血管腫(にゅうじけっかんしゅ)、単純性血管腫、サーモンパッチ | 血管の増殖・拡張 | 種類による |
なお、同じ色に見えても複数の疾患が含まれるため、見た目だけで自己判断することはおすすめできません。ここからは、それぞれの特徴を詳しくみていきます。
黒あざは、医学的には「色素性母斑(しきそせいぼはん)」または「母斑細胞母斑」と呼ばれます。メラニンを含む母斑細胞が皮膚の中に集まってできるもので、いわゆる「ほくろ」も小さな色素性母斑の一種です。
色は濃い褐色(かっしょく)から黒色までさまざまで、表面が平らなものもあれば、盛り上がってざらついた質感になるもの、硬い毛が生えているもの(獣皮様母斑:じゅうひようぼはん)もあります。
境界は比較的はっきりしており、全体の色調が均一であることが一般的です。
生まれつき存在するものは「先天性色素細胞母斑(せんてんせいしきそさいぼうぼはん)」と呼ばれ、新生児のおよそ1%にみられます。
成人したときの推定サイズによって分類され、直径1.5cm未満を小型、1.5〜20cm程度を中型、20cmを超えるものを大型・巨大型と呼びます。
大型のものは背中や腰、体幹に広く分布することがあります。
※大型のあざは生まれた時には小さいですが、成長し皮ふ面積が広くなるにつれてあざも伸ばされるイメージです。
黒あざは、体の成長に合わせて面積が広がっていきます。
これは病変が悪化しているのではなく、皮膚の成長に伴う自然な変化です。また思春期にはホルモンの影響で色が濃くなったり、毛が太く目立つようになったりすることもあります。
これらは自然に消えることはありません。
小型・中型の色素性母斑が悪性化することはまれですが、大型・巨大型の先天性色素細胞母斑では、悪性黒色腫(メラノーマ)が発生するリスクがわずかに高いことが知られています。
また、体幹に大型のあざがあり、周囲に多数の小さなあざ(衛星病変)を伴う場合には、中枢神経にも色素細胞がみられる神経皮膚黒色症の可能性があり、乳児期の画像検査が検討されることもあります。
治療としては、大きさや部位、年齢に応じて外科的切除、分割切除、皮膚移植、組織拡張器(エキスパンダー)を用いた再建、レーザー治療などが選択されます。
治療方針は患者様の病変により異なるため、先ずは皮膚科や形成外科での相談をおススメいたします。
茶あざの代表は「扁平母斑(へんぺいぼはん)」です。表皮のメラニン色素が増加することで生じ、平らで均一な薄茶色〜コーヒー牛乳色のあざとして現れます。
生まれつき、あるいは幼少期に現れることが多く、表面の盛り上がりや硬さはなく、触っても周囲の皮ふとの差を感じません。
境界は比較的はっきりしており、大きさは数ミリ程度から手のひら以上に及ぶものまでさまざまです。
体幹や四肢(腕や足)を中心に、全身のどこにでも生じます。日焼けの後にはっきりして見えることもありますが、自然に消えることはありません。
思春期前後に、肩・胸・背中・上腕などに現れる、境界がややあいまいな褐色(かっしょく)のあざです。
しばしば毛が生えていることもあり、男性にやや多くみられます。ホルモンの影響が関与すると考えられており、思春期に急に濃くなることから心配して受診される方も少なくありません。
カフェオレ斑と呼ばれる淡い褐色(かっしょく)のあざは、健康な方にも1〜2個みられることは珍しくありません。
しかし、次のような場合には全身疾患との関連を確認する必要があります。
上記のような状態は神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)などの可能性が高いです。
カフェオレ斑そのものは無害ですが、数と大きさによっては上記のような病気の可能性もあります。心当たりがある場合は皮膚科や小児科にご相談ください。
なお茶あざはレーザー治療の対象となることがありますが、個人差が大きく、いったん薄くなっても再び濃くなる(再発する)ことも多いです。
そのため、治療を検討する際は、効果の見込みと再発の可能性について十分な説明を受けることが重要です。
青あざは、真皮の深い部分に色素細胞が存在することにより、青灰色〜青褐色に見えるあざです。代表的なものに蒙古斑(もうこはん)、太田母斑、伊藤母斑、青色母斑があります。
蒙古斑(もうこはん)は、日本人の乳児のほとんどにみられる、おしりから腰にかけての青灰色のあざです。
胎児期に表皮へ移動するはずだった色素細胞が真皮に残ることで生じます。多くは5〜6歳頃から徐々に薄くなり、10歳前後までにほとんど目立たなくなります。
一方、背中・肩・手足・顔など、通常とは異なる部位に現れるものは異所性蒙古斑(いしょせいもうこはん)と呼ばれます。
色が濃いものや範囲の広いものは成人まで残ることがあり、露出部にある場合には治療が検討されることもあります。
顔の片側、特に目の周囲・こめかみ・頬・額(三叉神経:さんしゃしんけいの第1・第2枝が支配する領域)に生じる青褐色のあざです。
白目の部分(眼球結膜:がんきゅうけつまく・強膜:きょうまく)にも色素がみられることがあります。
生後まもなく現れるものと、思春期以降に現れるものの2つのピークがあり、女性に多い傾向があります。
自然に消えることはなく、思春期以降に色が濃くなることもあります。
伊藤母斑は、肩から上腕、肩甲部(けんこうぶ:首筋から背中の上部、左右の肩甲骨周辺にかけての広い部位 )にかけて生じる太田母斑と同様の色のついたあざです。
青色母斑は、数ミリから1センチ程度の青黒色でドーム状に盛り上がったできもので、大型のものや急に大きくなるものはあざ以外の病気の可能性もあるため、医療機関での診察をおススメします。
ぶつけた覚えがないのに青あざが繰り返しできる、左右対称に多発する、点状の出血や鼻血、歯ぐきからの出血を伴う、といった場合には、血液や血管の病気が隠れている可能性があります。
このような場合は、皮膚科ではなく内科や小児科での血液検査が必要となりますので、お早めの受診をお願いします。
赤あざは、血管の増殖や拡張によって生じるあざで、色素によるあざとは成り立ちが異なります。お子様が乳幼児の場合には、受診が必要となる場合も含まれるため、あわせて知っておきたい分類です。
生後1〜4週頃から現れ、数か月かけて急速に盛り上がり、いちごのような赤い腫瘤(しゅりゅう:体の表面や内部にできる「しこり」や「こぶ」「はれもの」などの異常な塊の総称 )になります。
1歳前後をピークに、その後数年かけて自然に縮小していきますが、皮膚のたるみや瘢痕(はんこん)、毛細血管の拡張が残ることもあります。
目・鼻・口の周囲、のど、おむつのあたる部位にできたものや、大きく急速に増大するものは、お子様の身体機能への影響や潰瘍(しゅよう)のリスクがあるため、生後早期の内服治療が検討されます。
生まれつきみられる、平らな赤〜赤紫色の斑です。
自然に消えることはなく、加齢とともに色が濃くなり、成人以降は表面が盛り上がって凹凸を生じることがあります。
顔の広い範囲、特に額(ひたい)からまぶたにかけて存在する場合は、けいれんや緑内障(りょくないしょう:眼圧が上がり、視力などに影響がでる目の病気)を伴うスタージ・ウェーバー症候群の可能性があり、専門的な診断が必要です。
額や眉間(みけん)、まぶたにみられる淡い赤色斑をサーモンパッチと呼び、多くは1〜2歳頃までに目立たなくなります。
うなじにできるウンナ母斑は、成人後も残ることが比較的多いあざです。
「そのうち消えますよ」と言われた経験のある方も多いのではないでしょうか。実際に自然消退するあざはありますが、それはごく一部です。種類ごとに整理すると次のようになります。
| 自然に消えることが多いあざ | 自然には消えないあざ |
|---|---|
| 蒙古斑(腰・おしり) サーモンパッチ(額・まぶた) 乳児血管腫(縮小するが痕(あと)が残ることあり) 打撲による皮下出血 |
色素性母斑(黒あざ) 扁平母斑・ベッカー母斑(茶あざ) 太田母斑・伊藤母斑(青あざ) 単純性血管腫(赤あざ) |
注意していただきたいのは、「消えるかどうか」だけでなく「治療に適した時期がある」という点です。
乳児血管腫は増殖期に入る前の早い段階で治療がお子様のお肌に痕(あと)として残らないためには重要であり、太田母斑や色素性母斑は皮膚が薄く柔らかい乳幼児期のほうが治療効果が得られやすいと考えられています。
そのため、親御さまが様子をみているうちに、お子様の治療の適齢期を過ぎてしまうことがあります。
自然に消えるあざかどうかをご家庭で判断するのは難しいため、気になるあざがある場合は、早い段階で一度診断を受けておくことをおススメいたします。
あざの多くは経過観察で問題ありませんが、次のようなサインがある場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。
皮膚のできものを評価する際の目安として、ABCDEルールが知られています。
特に、足の裏や手のひら、爪にできた黒い斑、爪の黒い縦すじが幅を増してきた場合、また大人になってから新しくできた濃い黒色の斑には注意が必要です。
赤あざのうち乳児血管腫は、生後数か月のうちに急速に大きくなる時期があります。
目の周囲にあって視界をさえぎる、鼻や口、のどの近くにある、おむつが当たって潰瘍ができやすい、といった場合は、生後早期の対応が経過を左右します。
「そのうち消えるから」と待たずに、まずは受診し医師に相談することをおススメいたします。
あざの診断は、まず皮膚科が窓口となります。
切除(せつじょ)などのあざを消し、その後の傷痕を目立たなくさせる治療が必要と判断された場合は形成外科を受診しましょう。
乳児のあざや全身疾患かどうかの診断が必要な場合は小児科へと連携して進めるのが一般的です。
まぶたの赤あざや太田母斑では眼科での確認が必要になることもあります。
受診の際は、いつからあるのか、大きさや色の変化の有無、痛み・出血の有無、ご家族に同じようなあざがある方がいるかを整理してメモしておくとスムーズです。
スマートフォンで定期的に写真を撮っておき、定規や硬貨などを一緒に写しておくと、大きさの変化を客観的に比較でき、担当した医師も的確な診断がしやすくなります。
当院では、患者様のお悩みのあざについて適切な診断を行い、経過観察でよいものか治療が必要なものかを判断いたします。
必要に応じて専門施設へのご紹介や連携もスムーズに行っておりますので、気になっているあざがある場合は、一人で悩まずお気軽にご相談ください。
当院は保険診療を主軸とした皮膚科クリニックです
当院の皮膚科診療実績:2025年度 年間延べ来院者数 19,763名
(集計期間:2025年1月〜12月 当院レセコンデータに基づく)
あざにはさまざまな種類があり、正しく診断することが大切です。
気になる症状がある場合は、一人で悩まずお気軽にご相談ください。
あざは、皮膚の色素細胞や血管の分布の違いによって生じるものであり、色によって黒あざ・茶あざ・青あざ・赤あざに分けられます。
蒙古斑(もうこはん)やサーモンパッチのように自然に消えるものがある一方で、色素性母斑や扁平母斑(へんぺいぼはん)、太田母斑、単純性血管腫のように、時間が経っても消えず、むしろ濃く目立つようになるものもあります。
カフェオレ斑の数や乳児の赤あざの位置、ぶつけた覚えのない青あざなど、皮ふ以外の病気のサインとなるあざも存在します。
また、急に大きくなる、色ムラが出る、出血するといった変化がみられる場合は、早めの受診をおススメいたします。
あざにはさまざまな種類があり、色や症状によって適切な診療科や治療法が異なります。
気になる症状がある場合は、自己判断で経過をみるのではなく、皮膚科などの専門医へご相談ください。
正しい診断を受けることが、必要な治療を適切な時期に受けるための第一歩となります。