BLOGブログ
新宿新南口れいわクリニック院長の関口です。
「朝晩の冷え込みが増えてから、体のだるさが抜けない」
「体の片側だけ、ピリピリ、チクチクとした痛みがある」
「服がこすれただけで、皮膚がヒリヒリして痛む」
「体の片側に、赤い発疹が帯のように並んで出てきた」
秋から冬にかけて朝晩の気温差が大きくなる季節は、自律神経が乱れやすく疲れが抜けにくい時期です。もし上記のような症状が重なっているなら、それは「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」の始まりかもしれません。
帯状疱疹はできるだけ早い段階で抗ウイルス薬による治療を始めることが極めて重要です。今回は、寒暖差との関係、初期症状の見分け方、早期受診が欠かせない理由について詳しく解説します。
帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)と同じ「水痘・帯状疱疹ウイルス」が原因で引き起こされる病気です。子どもの頃に水ぼうそうにかかると、治ったあともウイルスは体内から完全に消え去るわけではなく、神経の根元にある「神経節」に潜伏し、眠ったような状態で長年留まり続けます。
普段は体の免疫機能がウイルスを抑え込んでいますが、強いストレスや過労、病気、免疫を抑える薬剤の使用、そして加齢によって免疫力が低下するとウイルスが再び活動を始めます。神経を伝わって皮膚へと広がり、チクチクとした痛みと帯状の発疹を引き起こすのが帯状疱疹です。
発症率は加齢とともに高くなり、厚生労働省の報告によると日本では70歳代での発症が最も多くなっています。その他にもHIV感染、がん、臓器移植、免疫抑制薬やステロイドの使用などがリスクを高める要因として知られています。
気温や天候の変化と帯状疱疹の発症に関する関係は国内外で調査されてきました。しかし、現時点で「寒暖差が直接の原因である」と証明されたわけではありません。
中国の合肥市で行われた5年間・4万3,547人を対象とした研究では、気温や湿度が高い日に受診が増える傾向がみられた一方、1日の最高気温と最低気温の差(寒暖差)と受診数との間に統計的な関連は認められませんでした。また、米国CDC(疾病予防管理センター)は「帯状疱疹に明確な季節性の増減はない」としているなど、季節ごとの発症パターンについては研究により見解が分かれています。
ただし、強い身体的疲労や精神的ストレスが発症の大きな引き金になることは間違いありません。季節の変わり目は、寒暖差そのものを過度に恐れるよりも、質の良い睡眠と適度な休息を意識し、疲れをため込まない体調管理を優先することが大切です。

帯状疱疹は、目に見える発疹が出る前からすでに始まっています。最も特徴的なのは、皮膚の見た目に変化が出る前に「痛みや違和感」が先行する点です。
発疹が現れる1〜5日前から、皮膚のかゆみ、ピリピリ・チクチクとした痛み、焼けるような熱感が現れます。人によっては頭痛、全身のだるさ、光をまぶしく感じる症状、微熱を伴うこともあります。
【発疹が出る前に現れやすいサイン】
その後、数日たつと赤い小さなブツブツが現れ、水ぶくれ(水疱)へと変化します。水ぶくれは3〜5日ほど新しいものが増え続けたあと、徐々にかさぶたになり、通常2〜4週間ほどかけて治癒に向かいます。
発疹は神経の走行に沿って現れるため、「体の中心線を越えず、左右どちらか片側だけに帯状に広がる」のが最大の特徴です。好発部位は、胸から背中にかけてが約半数を占め、首まわりが約2割、顔面が約15%、腰やお尻まわりが約1割となっています。
発疹が出る前は痛みだけが目立つため、場所によっては尿路結石、狭心症などの心疾患、肋間神経痛、歯痛など別の病気と間違われることも少なくありません。「体の片側だけに数日続く痛みがあり、あとから赤みが出てきた」という場合は、帯状疱疹を強く疑う必要があります。
帯状疱疹の治療の基本は、原因ウイルスを退治する「抗ウイルス薬の内服」です。神経の炎症と損傷を最小限に抑えるため、できる限り早く治療を開始する必要があります。
抗ウイルス薬は、発疹が出てから72時間(3日)以内に内服を開始することで、皮膚症状の治癒を早め、急性期の強い痛みを速やかに軽減できることが示されています。72時間を過ぎた場合でも新しい水ぶくれが出ている間は効果が期待できますが、早く始めるほど薬の恩恵は大きくなります。
皮膚の発疹が完全に治ったあとも、長期間にわたって激しい痛みが残る後遺症を「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼びます。発症から3か月以上経過しても痛みが続く状態で、60〜65歳の方の約2割、80歳以上では約3割に見られます。高齢であることや、発疹・急性期の痛みが重症であった場合ほどリスクが高まるため、初期段階で痛みを抑え込むことが重要です。
額やまぶた、鼻先に発疹が出た場合は、角膜炎や結膜炎、視力障害を引き起こす恐れがあります。また、耳の周りに出た場合は顔面神経麻痺や難聴、めまいを伴う「ラムゼイ・ハント症候群」を合併することがあるため、一刻も早い受診が求められます。
以下のような症状に気づいたら、我慢せず速やかに皮膚科を受診してください。
● 体の片側だけにピリピリ・チクチクする痛みが続いている
● 片側の皮膚に赤い発疹や水ぶくれが出始めてきた
● 目の周り、おでこ、鼻先、耳の周りに痛みや水ぶくれがある
● 痛みが強く、夜眠れない、日常生活に支障をきたしている
● 糖尿病がある、または免疫を抑える薬を服用している
受診先はまず皮膚科が基本です。目の周りに症状が出ている場合は、眼科専門医との速やかな連携も必要になります。
水ぶくれの中には生きたウイルスが含まれており、すべてがかさぶたになるまでは周囲へ感染させる可能性があります。ただし、感染した人に発症するのは帯状疱疹ではなく「水ぼうそう」です。
水ぼうそうにかかったことがない方、ワクチン未接種の乳幼児、妊婦、免疫力が低下している方との接触は避けましょう。水ぶくれのある患部を衣類や清潔なガーゼで覆っておくことで、空気中や接触による感染リスクを大幅に減らすことができます。
帯状疱疹を確実に予防する手段として確立されているのが「帯状疱疹ワクチン」です。ワクチンは発症そのものを抑えるだけでなく、万が一発症してしまった場合の重症化や、治癒後の帯状疱疹後神経痛(PHN)のリスクを大幅に低減させます。
日本国内では2025年度より65歳を迎える方などを対象とした定期接種が開始されています(2025〜2029年度は経過措置として70、75、80、85、90、95、100歳になる方も対象)。ワクチンには「生ワクチン(皮下1回接種)」と「組換えワクチン(筋肉内2回接種)」の2種類があり、効果の持続性や持病に合わせて選択します。
日頃の生活においては、バランスの取れた食事、良質な睡眠、過度なストレスの解消を心がけ、免疫力を維持することが大切です。
帯状疱疹は、かつて体内に潜り込んだ水ぼうそうウイルスが、疲労や加齢による免疫力低下をきっかけに再燃する疾患です。寒暖差自体が直接の原因とは言えないものの、体調を崩しやすい季節の変わり目には特に警戒が必要です。
「体の片側だけのピリピリ感」 $\rightarrow$ 「赤み・水ぶくれ」の流れを見逃さず、発疹が出始めてから72時間以内に抗ウイルス薬を開始することが、痛みを長引かせないための最大のポイントです。
「ただの虫刺されや筋肉痛だろう」と様子を見ず、少しでも気になる症状があればお早めに皮膚科をご相談ください。