1. 秋にアトピー性皮膚炎が悪化しやすい理由とは?

首元にかゆみを感じて掻く女性のイメージ
※画像はイメージです。

秋口になると、こんな変化を感じる方がいます。

  • 夏は落ち着いていたのに、朝晩が冷え始めてからかゆくなってきた
  • 入浴後に肌がつっぱり、布団に入ってから掻いてしまう
  • 保湿剤を使っているのに、ひじの内側やひざの裏がカサカサする
  • 夜中にかゆみで目が覚め、朝になると掻いたところが赤くなっている

こうした症状は、季節の変わり目にアトピー性皮膚炎が悪化しているサインかもしれません。

気温・湿度の低下と皮膚のバリア機能

アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹がよくなったり悪くなったりをくり返す病気です。その背景の一つが、皮膚のバリア機能の低下です。

皮膚のバリアには、体の中から水分が逃げるのを防ぐとともに、外から刺激物やアレルゲンなどが入り込むのを防ぐ役割があります。

秋から冬にかけて気温や湿度が下がると、皮膚は乾燥しやすくなるのです。実際に、寒く乾燥した環境とアトピー性皮膚炎の悪化との関連は、ヨーロッパやアジアなどの研究でも報告されています。

そのため、症状がひどくなってから対処するだけでなく、秋のうちから皮膚の状態を整えておくことが大切です。

2. 乾燥すると、なぜかゆくなる?

バリア機能の低下で水分が逃げやすくなる

バリア機能が保たれた皮膚と低下した皮膚の比較図

アトピー性皮膚炎の皮膚では、皮膚の一番外側にある角質層のバリア機能が低下しています。

その原因にはさまざまなものがありますが、角質層の水分を保つために重要なセラミドの減少などが知られています。また、一部の患者さんでは、皮膚のバリア機能に関係するフィラグリンというたんぱく質の遺伝子に変異がみられるのも特徴の一つです。

バリア機能が低下すると皮膚から水分が逃げやすくなり、乾燥が進みます。さらに、刺激物やアレルゲンなどの影響も受けやすくなり、炎症やかゆみにつながる点も見逃せません。

「かゆいから掻く」の悪循環

かゆいから掻くと皮膚がさらに傷つき、炎症が強くなります。

「かゆい → 掻く → 皮膚が傷つく → さらにかゆくなる」

アトピー性皮膚炎では、この悪循環を断ち切ることが大切です。

秋は気温が下がるだけでなく、日によって寒暖差も大きくなります。急な皮膚温の変化でかゆみを感じやすくなることもあり、寒く乾燥した環境は皮膚のバリア機能にも影響します。

3. 保湿は毎日続けることが大切

乾燥対策の基本になるのが保湿です。

保湿剤を使用すると、使用しない場合と比べて皮膚症状の改善や悪化の予防につながり、ステロイド外用薬の使用量を減らせる可能性があることも報告されています。

毎日の保湿で意識したいポイント

毎日のケアでは、次の点を意識してみてください。

  • 少なくとも毎日、乾燥しやすいところを中心にしっかり塗る
  • 入浴後は皮膚が乾燥する前に、できるだけ早く塗る
  • 赤みやかゆみが落ち着いているときも保湿を続ける
  • 乾燥が強いところでは、軟膏タイプも選択肢になる

無理なく使い続けられる保湿剤を選ぶ

軟膏は皮膚を覆う作用が強く、クリームやローションに比べて刺激を感じにくい傾向があります。

ただ、ベタつきが気になって使わなくなってしまっては続きません。クリームやローションも含め、自分が無理なく使い続けられるものを選ぶことも大切です。

炎症が強いときは保湿だけでは不十分

一方、すでに赤みやかゆみなどの炎症が強く出ている場合、保湿だけで十分に抑えることは難しくなります。

その場合は、ステロイド外用薬など炎症を抑える治療を組み合わせます。

4. 肌が落ち着いている時期もケアを続ける

症状がよくなると、「もう薬や保湿剤は必要ないかな」と思う方もいるでしょう。

ただ、アトピー性皮膚炎はよくなったり悪くなったりをくり返す病気です。見た目がきれいになっていても、皮膚のバリア機能が十分に回復していないことがあります。

そのため、症状が落ち着いたあとも保湿を続けましょう。

再燃を減らす「プロアクティブ療法」とは?

アトピー性皮膚炎におけるリアクティブ療法とプロアクティブ療法の塗り薬を使うタイミングの違い

何度も炎症をくり返す部位では、症状が落ち着いたあとも週に2回程度、ステロイド外用薬などの抗炎症薬を使用する「プロアクティブ療法」が行われることがあります。再燃を減らすことが目的です。

ただし、どの薬を、どの部位に、どのくらいの頻度で使うかは一人ひとり異なります。自己判断で続けるのではなく、皮膚の状態を見ながら医師と調整しましょう。

5. 入浴と洗い方も見直してみましょう

入浴は汗や汚れを落とすために必要ですが、洗い方によっては皮膚の乾燥や刺激につながることがあります。

熱すぎるお湯や強い摩擦を避ける

次のような点に気をつけましょう。

  • 熱すぎるお湯は避け、ぬるめにする
  • 香料などが刺激になる場合は、低刺激の洗浄料を選ぶ
  • 強くこすって洗わない
  • 汗をかいたときは、できるだけ早く洗い流す
  • 入浴後は皮膚が乾燥する前に保湿する

秋でも汗をかいたあとのケアを

秋でも運動後や暖房の効いた室内では汗をかくことがあります。汗そのものを過度に避ける必要はありませんが、汗をかいたまま長時間放置すると刺激になることがあります。

洗浄料や入浴方法は肌の状態によって合うものが違うため、迷う場合は診察時にご相談ください。

6. 衣類や室内環境もかゆみに影響します

肌に直接触れる衣類や、毎日過ごす部屋の環境も見直してみましょう。

肌への刺激が少ない衣類を選ぶ

ウールなどのチクチクする素材や、特定の化学繊維が刺激になる方もいます。大切なのは「必ず綿でなければならない」と考えることではなく、自分の皮膚に刺激の少ない、やわらかく通気性のよい衣類を選ぶことです。

洗剤などが刺激になる場合もあるため、衣類を替えても症状が続くときは洗濯用品も確認してみましょう。

暖房で室温を上げすぎない

暖房で室温を上げすぎると汗をかき、かゆみが強くなることがあります。暑くしすぎないように調整してください。

加湿のしすぎにも注意する

加湿器は室内の乾燥対策にはなりますが、アトピー性皮膚炎そのものを改善する効果については、十分な根拠があるとはいえません。

反対に湿度を上げすぎるとカビが発生しやすくなります。室内のカビが症状に影響する可能性もあるため、加湿のしすぎにも注意しましょう。

7. こんな症状があれば皮膚科へ

毎日ケアをしていても、炎症が強くなることはあります。

次のような場合は、セルフケアだけで様子を見続けず、皮膚科を受診してください。

  • 保湿をしていても、かゆくて眠れない日が続く
  • 赤みやジュクジュクした部分、かさぶたが広がってきた
  • 掻いたところに痛みや膿が出てきた
  • 小さな水ぶくれが短期間で急に広がった

痛みや膿、急に広がる水ぶくれには注意

アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能が低下しているため、細菌による二次感染を起こすことがあります。

また、頻度は高くありませんが、単純ヘルペスウイルスによるカポジ水痘様発疹症を合併することもあります。痛みを伴う水ぶくれなどが急速に広がる場合には、早めの診察が必要です。

炎症に合わせてステロイド外用薬を使う

炎症が強いときは、保湿だけでなく炎症を抑える治療も欠かせません。

ステロイド外用薬は、アトピー性皮膚炎の炎症を抑える代表的な治療薬です。症状や塗る部位に合わせて適切な強さの薬を使い、炎症が落ち着いたら使用方法を調整していきます。

ステロイド外用薬では、長期間にわたって必要以上に強い薬を使用した場合などに皮膚が薄くなるといった副作用が起こることがあります。一方、適切な強さ・量・期間を守って使用することが大切であり、副作用を心配して必要な治療まで避けることも望ましくありません。

自己判断で薬の量や回数を増減せず、医師と相談しながら使用しましょう。

症状や生活スタイルに合わせた治療を

現在はステロイド外用薬以外にも、さまざまな外用薬が使えるようになりました。症状が強い場合には、注射薬や内服薬、光線療法などを検討することもあります。

当院では、皮膚症状の程度だけでなく、年齢や生活スタイルなども確認しながら治療方法を考えていきます。

8. まとめ|秋からの保湿と適切な治療で、肌のよい状態を保ちましょう

秋から冬にかけては気温や湿度が下がり、アトピー性皮膚炎の症状が悪化する方も少なくありません。

大切なのは、症状がひどくなってから対処するだけでなく、普段から保湿を続けて皮膚のバリア機能を保つことです。

入浴では熱すぎるお湯や強い刺激を避け、入浴後はできるだけ早めに保湿しましょう。衣類や室温など、肌に触れる環境を見直すことも役立ちます。

それでも症状が悪化する場合や、かゆみで眠れない、ジュクジュクした湿疹が広がるといった症状がある場合は、保湿だけで我慢せず皮膚科を受診してください。

アトピー性皮膚炎は、そのときの症状に合わせて治療を調整しながら、よい状態を維持していくことが目標です。