1. 粉瘤とニキビの違いとは?原因・構造と中身の比較

ニキビのような粉瘤

ニキビと粉瘤は、どちらも毛穴に関係して起こるという点では共通しています。ただ、そこから先の成り立ちがまったく違います。

ニキビ(尋常性痤瘡)は、皮脂を出す器官である皮脂腺が中心になって起きる炎症です。皮脂の分泌が増え、毛穴の出口が角質でふさがれ、そこにアクネ菌が増殖することで赤みや膿を伴うようになります。あくまで毛穴とその周囲で起きている変化ですので、炎症が治まれば皮膚は元の状態へ戻っていきます。

一方の粉瘤は、皮膚の下に「袋」そのものができてしまった状態です。毛穴の入口にあたる部分(毛包漏斗部)の壁が皮膚の内側へ落ち込み、袋状の構造をつくります。この袋の内側は皮膚の表面と同じ組織でできているため、袋の内部へ向かって垢(角質)をつくり続けます。行き場を失った角質が袋の中にたまり、少しずつふくらんでいく。これが粉瘤の正体です。

つまり、ニキビは毛穴の詰まりと炎症、粉瘤は皮膚の下にできた袋。同じような場所にできても、成り立ちがまるで別物なのです。

なお粉瘤は「脂肪の塊」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。袋の中身のほとんどは皮脂ではなく角質(ケラチン)で、脂腺そのものから生じるわけでもないためです。ドロッとした見た目からそう誤解されやすいのですが、実際には長期間たまった垢とお考えいただくとイメージしやすいかと思います。

2. ニキビと粉瘤が間違われやすい3つの理由

粉瘤とニキビが混同されるのは、患者さんの勘違いというより、そもそも両者に接点があるからです。

粉瘤は、毛穴が繰り返し炎症を起こした場所にできやすいことが分かっています。ニキビができやすい方は毛穴の詰まりや毛包のダメージが起こりやすく、もともとあった面皰(コメド。ニキビの初期病変)から粉瘤が育つこともあります。実際、ニキビのある方では粉瘤の発生頻度が高いと報告されています。

できる場所も重なります。粉瘤は顔・頭・首・背中・陰嚢などに多く、ニキビの好発部位とほぼ一致するのです。顔と背中にニキビが出やすい方が、同じ場所に粉瘤もつくってしまう。診察室ではよく見る組み合わせです。

年齢層も似ています。粉瘤は20代から40代に多く、男性は女性のおよそ2倍とされています。ちょうどニキビが落ち着いてくる年代と重なるため、「大人ニキビがひとつだけ残っている」と感じてしまう方が多いのだと思います。

3. セルフチェック!粉瘤を疑う見分け方のサイン

ご自宅でも確認できる手がかりがあります。当てはまる項目が多いほど、粉瘤の可能性は高くなります。

  • 中央に、黒い点のような小さな穴(開口部)がある
  • 皮膚の下に、輪郭のはっきりした丸いしこりを触れる
  • 指で軽くつまむと、皮膚ごとコロコロと動く
  • 数か月から数年かけて、ゆっくり大きくなってきた
  • 押すと白から黄色のドロッとしたものが出て、強いにおいがする
  • ニキビの外用薬を続けても、まったく変化がない

中央の黒い点は開口部と呼ばれ、袋が皮膚の表面とつながっている出口にあたります。粉瘤に特徴的な所見で、ニキビにはない目印になります。ここから内容物が押し出されるため、「潰したら何か出てきた」という経験につながるわけです。

大きさは数ミリから数センチまでさまざまで、何年もそのまま変わらないこともあれば、時間とともに大きくなっていくこともあります。どちらの経過をたどるかを事前に予測する方法はない、というのが現時点での見解です。

においも重要な判断材料です。粉瘤の中身は角質が長期間たまったもので、チーズ様と表現される独特の性状と強いにおいを伴います。ニキビの膿とは質が違いますので、「これまでのニキビと何か違う」という感覚は、かなり信頼できるサインだと考えてよいでしょう。

4. 急に赤く腫れて痛む「炎症性粉瘤」の正体と注意点

粉瘤は普段、痛みもかゆみもなく静かに存在しています。ところがある日突然、赤く腫れ上がり、触れられないほど痛むことがあります。これを炎症性粉瘤と呼びます。

原因は、袋が破れることです。袋が破れると、中にたまっていた角質が周囲の組織へ漏れ出します。体はこれを異物と認識して強い炎症反応を起こし、赤み・腫れ・痛みが一気に現れるという仕組みです。細菌感染を伴う場合もあり、その際は皮膚に常在する黄色ブドウ球菌などが関わります。

背中を強くぶつけた、誰かに背中を叩かれた、といったきっかけの後に急に腫れ出したというお話は、診察室でもよく伺います。それまで気づいていなかった粉瘤が、腫れて初めて発見されることも多いのです。

このとき注意していただきたいのが、見た目がおできや化膿した傷とよく似ている点です。抗菌薬だけで様子を見られるケースがありますが、抗菌薬が抑えられるのは炎症であって、原因である袋そのものは皮膚の下に残ります。ですから炎症が治まっても袋は消えず、しばらくして再び腫れることが少なくありません。

炎症性の粉瘤の疾患写真

5. 自分で潰すのはNG!放置や自己処置を避けるべき3つの理由

中身が出てくると、つい指で押し出したくなります。実際、押せば一時的に小さくなりますし、すっきりした気持ちにもなるでしょう。それでも、ご自分で潰すことはおすすめできません。理由は3つあります。

ひとつめは、袋が残ることです。押し出せるのは中身だけで、角質をつくり続ける袋の壁は皮膚の下に残ります。そのため時間が経てば再び中身がたまり、同じ場所が再びふくらんできます。

ふたつめは、炎症のきっかけになることです。強く圧迫すると袋が破れ、内容物が周囲の組織に漏れ出します。前の項目で説明した炎症性粉瘤は、まさにこの状態です。自分で押した翌日から赤く腫れて受診された、という方は珍しくありません。

みっつめは、手術が難しくなることです。炎症を繰り返した粉瘤は袋の壁がもろくなり、周囲の組織と癒着します。そうなると袋をきれいに取り出すことが難しくなり、取り残しによる再発のリスクが上がります。炎症が強い時期は摘出手術を避け、いったん炎症を落ち着かせてから改めて手術を行うのが一般的です。

また、粉瘤は自然に治ることをあまり期待できません。一見小さくなったように見えても袋は残っているため、治療をしない限り繰り返す可能性があります。逆にいえば、袋ごと確実に取り除けば再発しないということでもあります。

6. 当院の粉瘤摘出手術の料金について(保険適用)

当院の粉瘤摘出手術は、健康保険が適用されます。料金は、粉瘤ができている部位や大きさによって異なります。

顔や首などの露出部と、背中などの非露出部では保険診療上の区分が異なり、粉瘤の大きさによっても手術費用が変わります。

以下は、粉瘤を1つ摘出する場合のおおよその費用です。実際の費用は、診察時に粉瘤の大きさや状態を確認したうえで決定します。また、手術費用とは別に、術前の診察・検査費用などがかかります。

粉瘤摘出手術 費用目安(3割負担の場合)

露出部(顔、首、肘から指先、膝から足先)

2cm未満 1つ 約7,000~8,000円
2cm~4cm未満 1つ 約13,000~14,000円
4cm以上 1つ 約15,000~16,000円

非露出部(露出部以外:背中・胸・腹部など)

3cm未満 1つ 約7,000~8,000円
3cm~6cm未満 1つ 約12,000~13,000円
6cm~12cm未満 1つ 約14,000~15,000円
12cm以上 1つ 約27,000円

※ 手術費用のほかに、初診・再診料、術前検査代(約3,000円)、病理検査代、処方薬代などが別途かかります。

まとめ:こんなときは皮膚科を受診してください

すべての粉瘤を今すぐ手術しなければならない、というわけではありません。ただ、次のような場合は早めの受診をおすすめします。

  • 赤く腫れて痛みが出ている
  • 短期間で明らかに大きくなってきた
  • 以前にも同じ場所が腫れたことがある
  • 顔や首など、目立つ場所にできている
  • ニキビの治療を続けても改善しない
  • しこりが硬く、皮膚と一体になって動きにくい

特に最後の項目は注意が必要です。粉瘤はごくまれに悪性化することが知られており、また脂肪腫や皮膚がんなど、粉瘤と見分けにくい別の病気も存在します。しこりの正体を正確に判断するには診察が欠かせません。

大きくなるほど傷跡も大きくなりますので、気になった時点で相談していただくのが結果的にいちばん負担の少ない選択になります。顔や背中にできた硬いしこりで「ニキビにしては様子がおかしい」と感じたら、一度れいわクリニックまでお気軽にご相談ください。

【参考文献・出典】