1. ホクロと粉瘤の違いとは?原因となる細胞と構造の比較

ほくろに似ている粉瘤

ホクロは、医学的には母斑細胞母斑(ぼはんさいぼうぼはん)と呼ばれます。皮膚の色をつくるメラノサイトという細胞が由来で、これが集まって巣をつくり、メラニン色素を蓄えることで黒や茶色に見えます。つまりホクロは、色素をもつ細胞の集まりそのものです。

対して粉瘤は、皮膚の下にできた袋とその中身であり、色素細胞は関与しません。中に入っているのは皮膚から剥がれ落ちた角質で、本来は白から黄色をしています。ここが決定的な違いです。ホクロは色の病変、粉瘤は構造の病変。同じ「黒っぽいできもの」に見えても、皮膚の中で起きていることはまったく別ものなのです。

2. なぜ粉瘤が黒く見えるのか?黒ニキビや色素沈着との関係

色素細胞が関わらない粉瘤が、どうしてホクロのように黒く見えるのでしょうか。理由は主に3つあります。

ひとつは開口部です。粉瘤には袋と皮膚の表面をつなぐ小さな穴があり、この部分には角質が詰まっています。詰まった角質は空気に触れて酸化し、黒っぽく変色します。これがちょうど小さなホクロのような黒い点として見えるのです。ニキビの黒ずみ(黒ニキビ)と同じ原理と考えていただくと分かりやすいでしょう。

ふたつめは、内容物が透けて見えることです。皮膚が薄い部位に粉瘤ができると、たまった内容物が皮膚越しに青黒く、あるいは灰色がかって見えることがあります。全体が薄暗い色調を帯びるため、盛り上がったホクロと見間違えられます。

みっつめは色素沈着です。粉瘤が一度炎症を起こすと、治まった後もその部分の皮膚に色素が残ることがあります。茶色いシミのような変化がしこりの上に重なると、いよいよホクロらしく見えてしまいます。

3. 自己判断は危険!ホクロに似た悪性腫瘍(基底細胞癌・メラノーマ)の見分け方

粉瘤とホクロの区別は、正直なところ急を要するものではありません。どちらも良性だからです。本当に注意すべきは、ホクロに似た悪性腫瘍がまぎれているケースです。代表的なのが基底細胞癌です。皮膚がんの中でもっとも多いタイプで、日光にさらされる部位に生じます。とくに鼻・頬・額・鼻の脇・まぶたといった顔面が好発部位で、粉瘤やホクロができやすい場所とそのまま重なります。

見た目は、光沢のあるピンク色から肌色の小さな盛り上がりで、表面に細い血管が透けて見えるのが典型です。大きくなると中央がへこんで潰瘍になり、周囲がロール状に盛り上がった形をとります。かさぶたができては出血する、というエピソードをきっかけに受診される方が多いのも特徴です。

基底細胞癌の最大の要因は長年の紫外線曝露で、診断される年齢の中央値はおよそ68歳とされています。屋外での仕事や趣味が長かった方、日焼けを繰り返してきた方では、顔のできものを「ただのホクロ」と決めつけないほうが安全です。やっかいなのは、メラニンを含んで黒く見えるタイプ(色素性基底細胞癌)があることです。この場合、見た目はほとんどホクロや悪性黒色腫と区別がつきません。基底細胞癌は転移することが極めてまれな一方で、放置すると周囲の組織を破壊しながら深く広がります。顔面という場所を考えると、早く見つけるに越したことはありません。

もうひとつ、悪性黒色腫(メラノーマ)も念頭に置く必要があります。判断の目安として国際的に使われているのがABCDEという観点です。

A(Asymmetry):左右非対称である

B(Border):輪郭がギザギザ、または境界がぼやけている

C(Color):黒・茶・赤などが混ざり、色むらがある

D(Diameter):直径が6ミリを超えている

E(Evolving):大きさ・形・色が変化している、盛り上がってきた

これらに当てはまるものが必ず悪性というわけではありません。ただ、複数該当する場合は、自己判断で様子を見ずに診察を受けていただきたいと思います。

メラノーマ(悪性黒色腫)

4. クリニックでの診察・鑑別方法(ダーモスコピーと病理検査)

受診されると、まず視診と触診を行います。粉瘤であれば、開口部の有無や皮膚の下での可動性を確認することで、多くはこの段階で見当がつきます。色素性の病変が疑われる場合は、ダーモスコピーという検査を行います。皮膚に特殊な光を当て、拡大して観察する方法です。肉眼では見えない色素の分布パターンや血管の走行を確認でき、この検査を加えることで診断の精度が2割ほど向上すると報告されています。痛みはなく、その場で数十秒で終わります。

粉瘤と紛らわしいできものは、実はホクロだけではありません。脂肪の塊である脂肪腫、毛の細胞から生じる石灰化上皮腫、皮膚の下にできる別のタイプの嚢腫など、いくつも候補があります。腫瘍がどの深さまで及んでいるかを含めて確認したいときは、超音波検査を追加することもあります。

そして最終的に確実な診断となるのは、病理検査です。当院では切除した粉瘤を病理検査に提出しています。粉瘤が悪性化する頻度は1パーセント未満とごくわずかですが、ゼロではないためです。「良性のはずだから調べなくてよい」ではなく、調べた上で良性と確認する。これが安全な進め方だと考えています。

新宿新南口 れいわクリニックの診察台

5. 当院の粉瘤摘出手術の料金について(保険適用)

当院の粉瘤摘出手術は、健康保険が適用されます。料金は、粉瘤ができている部位や大きさによって異なります。

顔や首などの露出部と、背中などの非露出部では保険診療上の区分が異なり、粉瘤の大きさによっても手術費用が変わります。

以下は、粉瘤を1つ摘出する場合のおおよその費用です。実際の費用は、診察時に粉瘤の大きさや状態を確認したうえで決定します。また、手術費用とは別に、術前の診察・検査費用などがかかります。

粉瘤摘出手術 費用目安(3割負担の場合)

露出部(顔、首、肘から指先、膝から足先)

2cm未満 1つ 約7,000~8,000円
2cm~4cm未満 1つ 約13,000~14,000円
4cm以上 1つ 約15,000~16,000円

非露出部(露出部以外:背中・胸・腹部など)

3cm未満 1つ 約7,000~8,000円
3cm~6cm未満 1つ 約12,000~13,000円
6cm~12cm未満 1つ 約14,000~15,000円
12cm以上 1つ 約27,000円

※ 手術費用のほかに、初診・再診料、術前検査代(約3,000円)、病理検査代、処方薬代などが別途かかります。

まとめ:判断に迷ったら、その時点が受診のタイミングです

次のような場合は、早めに皮膚科へご相談ください。

● 急に大きくなった、または最近になって盛り上がってきた

● 色にむらがあり、輪郭がはっきりしない

● 出血やかさぶたを繰り返している

● 表面に光沢があり、細い血管が透けて見える

● つまんでも動かず、皮膚と一体になっている

● 生まれつきではなく、大人になってから新しくできた

顔にできたできものは、放っておくほど大きくなり、治療した際の傷跡も比例して目立ちます。そして何より、ホクロだと思って何年も様子を見ていたものが別の病気だった、という事態は避けたいところです。

粉瘤であれば良性ですので、慌てる必要はありません。ただ、それを確かめるためには一度診察を受けていただく必要があります。顔の黒っぽいできもので気になるものがありましたら、一度れいわクリニックまでご相談ください。

【参考文献・出典】