1. 粉瘤の手術には、大きく2つの方法があります

粉瘤の疾患のある皮膚

粉瘤の摘出には、切開法(紡錘形切除)とくり抜き法(へそ抜き法)という2つの術式があります。

くり抜き法は、粉瘤の中央にある開口部に円筒状の刃を当て、小さな丸い穴を開ける方法です。そこから中身を押し出し、空になった袋を引き抜きます。傷が小さくて済むのが最大の利点で、比較的小さく、炎症を起こしていない粉瘤に向いています。

ただし、すべての粉瘤でくり抜き法が適しているわけではありません。粉瘤が大きい場合や、炎症を繰り返して周囲と癒着している場合などでは、小さな穴から袋を取り出すことが難しく、無理に摘出すると袋が破れて一部が残ってしまう可能性があります。

一方の切開法は、粉瘤を皮膚ごと紡錘形(木の葉のような形)に切り取り、袋を丸ごと摘出して縫い合わせる方法です。傷の長さはくり抜き法より長くなりますが、袋を直接見ながら剥離できるため、確実性の高い方法といえます。

また、「傷が小さい=傷跡が目立たない」とは限りません。特に顔の粉瘤では、くり抜き法で小さな丸い傷を残すよりも、粉瘤の大きさや皮膚の状態に合わせて切開線を設計し、紡錘形に切除して丁寧に縫合したほうが、術後の傷跡が目立ちにくくなる場合があります。

形成外科医が切開法を行う場合は、単に粉瘤を取り除くだけではなく、切開する位置や方向、皮膚の余り、縫合後の傷の状態まで考慮して手術を設計できることも重要なポイントです。

一般に、袋を破らずに完全な形で取り出せたときがもっとも確実です。逆に袋の一部が体内に残れば、そこから再び角質がたまって再発します。この一点が、術式を選ぶうえでの共通の判断軸になります。

2. 大きい粉瘤や顔の粉瘤で、形成外科医による切開法がおすすめされる理由

粉瘤の治療では、「できるだけ傷を小さくしたい」と考える方も多いでしょう。しかし、大きな粉瘤や顔にできた粉瘤では、傷の小ささだけで治療法を選ぶことが最適とは限りません。

形成外科では、粉瘤を摘出することだけでなく、どこを切開するか、皮膚をどの程度切除するか、傷をどの方向に置くか、そしてどのように縫合するかまで含めて、術後の見た目を考えて手術を行います。

特に、次のようなケースでは、形成外科医による切開法をおすすめします。

  • 直径が大きく、小さな穴からでは袋を引き出せない
  • 過去に炎症を繰り返し、袋が周囲の組織と癒着している
  • 袋の壁が薄くもろく、引っ張ると破れてしまう可能性が高い
  • 皮膚が伸びて余っており、切除しないと形が整わない
  • 悪性を否定するため、周囲の組織を含めて確実に採取したい

粉瘤が大きくなると、その上を覆う皮膚も引き伸ばされています。中身と袋だけを抜き取っても、伸びた皮膚がしぼんで残り、しわのようなたるみが生じます。とくに顔では、この余った皮膚が影をつくって目立つことがあるため、皮膚ごと切除して整える判断をします。

また、炎症を繰り返した粉瘤では、袋の壁がもろくなり、周りの組織との境目が分かりにくくなります。この状態で小さな穴から無理に引き出そうとすると、袋がちぎれて取り残しにつながります。しっかり視野を確保できる切開法のほうが、結果的に再発を防げるのです。

顔の手術では、切開の向きも重要です。皮膚には、しわの走行に沿った緊張の少ない方向があり、これに沿って切ることで傷跡が目立ちにくくなります。当院では切開の向きを事前に検討したうえで手術に臨んでいます。特に顔の粉瘤では、傷の長さだけで術式を判断するのではなく、術後に傷跡がどのように見えるか、周囲の皮膚とのバランスがどうなるかまで考えて方法を選択することが大切です。

また、粉瘤の袋をできるだけ残さず摘出し、再発を防ぐこと、そして術後の皮膚の形や傷跡まで整えることが重要です。

3. 切開による摘出手術は、こんな流れで進みます

実際の手術は、局所麻酔による日帰りの処置です。おおまかな流れをご説明します。

粉瘤切開摘出手術前のデザイン・マーキング写真
粉瘤切開手術前の切開線マーキング(開口部を含めた紡錘形のデザイン)
  • 皮膚を消毒し、切開の予定線をマーキングします
  • 粉瘤の周囲に局所麻酔を注射します。血管を収縮させる成分を含んだ麻酔薬を使うことで、出血を抑えられます
  • 麻酔は袋の周りに入れ、袋の中には直接注射しません。中に針を入れると内圧が上がり、袋が破れてしまうためです
  • 麻酔が効いたことを確認してから、開口部を含む形で皮膚を切開します
  • 袋の壁を傷つけないよう、周囲の組織から少しずつ剥離していきます
  • 袋ごと摘出し、出血を確認して止血します

手術そのものにかかる時間は、粉瘤の大きさや部位によりますが、多くの場合30分前後です。麻酔が効いてしまえば痛みはほとんどなく、押される感覚や引っぱられる感覚を覚える程度とお考えください。

粉瘤の切開術の手順

4. 炎症を起こしている粉瘤は、手順が変わります

赤く腫れて痛みが出ている状態で受診された場合、その日にすぐ摘出手術を行うとは限りません。膿がたまっている場合には、まず切開して膿を出す処置を優先します。

膿がたまった状態を抗菌薬だけで治すのは難しく、排出させることが治療の基本になります。この処置では、皮膚の緊張の少ない方向に沿って切開を入れ、内容物を出し、生理食塩水で洗浄します。周囲に炎症が広がっている場合には、抗菌薬の内服を併用します。

この段階では袋が残っていますので、炎症が落ち着くのを待って、改めて摘出手術を行うのが一般的な流れです。炎症の強い時期は袋の壁がもろく、周囲との境目も不明瞭になるため、無理に摘出しようとすると取り残しの危険が高まるからです。

ただし、炎症の程度や部位によっては、炎症があっても一度で摘出できると判断できる場合もあります。この判断は診察と、必要に応じた超音波検査を踏まえて行います。

5. 術後の経過と、傷跡の育ち方

手術当日は、シャワーや入浴に制限がかかります。翌日以降の過ごし方については、傷の部位や大きさに応じて個別にご説明します。

抜糸は、おおむね1週間前後で行います。ここで多くの方が「もう治った」と感じられるのですが、実は皮膚の内部ではまだ修復の途中です。傷が元の皮膚の8割程度の強さに戻るまでには、8週間ほどかかると考えられています。抜糸後しばらくは、傷に強い力がかかる動きや激しい運動を控えていただくのはこのためです。

粉瘤切開摘出手術の縫合直後の傷跡
粉瘤摘出後の縫合直後の状態(約1週間後に抜糸を行います)

手術に伴う合併症としては、出血、感染、傷跡が残ること、まれに傷が開いてしまうことなどが挙げられます。いずれも頻度は高くありませんが、ゼロではありません。そして手術後にもっとも多いのは、袋が完全に取り切れていなかった場合の再発です。当院で袋の摘出に時間をかけるのは、この一点を避けるためです。

傷跡は、術後2〜3か月ごろが見た目としてはもっとも目立つ時期になります。赤みを帯びて少し硬く盛り上がる方が多いのですが、これは異常ではなく、修復の過程で起こる自然な変化です。そこから半年、1年と時間をかけて、赤みが引き、平らに落ち着いていきます。傷跡の修正を検討する場合も、変化が続いている間は判断ができないため、手術から半年から1年ほど経過を見てから相談するのが原則です。

つまり、粉瘤の手術の傷跡は、直後の見た目で判断するものではありません。時間をかけて成熟していくものだと知っておいていただくと、経過中の不安がかなり軽くなるはずです。

6. 当院の粉瘤手術の料金について

当院の粉瘤摘出手術は、健康保険が適用されます。料金は、粉瘤ができている部位や大きさによって異なります。

顔や首などの露出部と、背中などの非露出部では保険診療上の区分が異なり、粉瘤の大きさによっても手術費用が変わります。

以下は、粉瘤を1つ摘出する場合のおおよその費用です。実際の費用は、診察時に粉瘤の大きさや状態を確認したうえで決定します。また、手術費用とは別に、術前の診察・検査費用などがかかります。

露出部(顔、首、肘から指先、膝から足先)

2cm未満 1つ 約7,000~8,000円
2cm~4cm未満 1つ 約13,000~14,000円
4cm以上 1つ 約15,000~16,000円
術前検査+診察 約3,000円

非露出部(露出部以外)

3cm未満 1つ 約7,000~8,000円
3cm~6cm未満 1つ 約12,000~13,000円
6cm~12cm未満 1つ 約14,000~15,000円
12cm以上 1つ 約27,000円
術前検査+診察 約3,000円

7. まとめ:小さいうちに相談したほうがよい、という理由

粉瘤は良性ですので、今すぐ手術しなければ命に関わる、という性質のものではありません。それでも早めの相談をおすすめするのには理由があります。

粉瘤が大きくなれば、それだけ切除する範囲が広がり、傷跡も長くなります。炎症を一度でも起こせば癒着が生じ、手術の難易度と再発のリスクが上がります。つまり、時間の経過とともに選べる選択肢が狭まっていくのです。

小さく、炎症を起こしていない段階であれば、術式の選択肢は広く、傷も最小限で済みます。顔にできた粉瘤であれば、この差は仕上がりに直接あらわれます。

しこりが気になっている、以前腫れたことがある、大きくなってきた気がする。そのいずれかに当てはまるようでしたら、一度れいわクリニックまでご相談ください。手術を受けるかどうかは、診察を受けてから決めていただいて構いません。