皮脂欠乏性湿疹の症例写真
「皮膚がかゆい」「粉をふいたように白くなる」「入浴後にひび割れる」こうした症状に悩む人が増えています。特に冬の寒い時期や高齢者に多く見られるのが、皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん)です。今回はこの皮脂欠乏性湿疹について、そのメカニズム、症状、できやすい部位、診断と治療、そしてセルフケアなどをお伝えします。
ここでは、皮脂欠乏性湿疹とはどのようなものなのか、それができるメカニズムについてお伝えします。
皮脂欠乏性湿疹とは、皮膚の潤いを保つために重要な皮脂膜や角質層のバリア機能が低下することによって起こります。そのため、放置すると強いかゆみや炎症を引き起こし、湿疹として慢性化することがあります。また、現代社会のライフスタイルや加齢によって発症率が高まっています。
皮膚表面には、皮脂腺から分泌される皮脂と汗腺から分泌される水分が混ざり合って「皮脂膜」を形成しており、この皮脂膜が角質層を覆い、外部刺激から皮膚を守り、内部の水分が蒸発するのを防いでいます。しかし、加齢や環境の影響、洗浄のしすぎなどにより皮脂分泌量が減少すると、皮脂膜が薄くなり、角質層の保湿成分(セラミド・天然保湿因子)が減少します。その結果、肌の乾燥が進み、かゆみや炎症を引き起こすのです。特に冬季は湿度が低く、室内暖房による乾燥も加わって皮膚の水分が失われやすくなります。さらに、加齢によるホルモンバランスの変化で皮脂腺の働きが弱まり、皮脂の分泌量が20代の半分以下になることも報告されています。これにより、高齢者のかたに皮脂欠乏性湿疹が多い理由です。
皮脂欠乏性湿疹の症状は、患者さまによっても異なりますが、大きく分けると5つの特徴があります。
皮脂欠乏性湿疹は、まず「肌の乾燥」から始まります。
皮膚の表面にある“皮脂(ひし)”が減ってしまうと、水分を守る力が弱くなり、肌がカサついたり、白い粉のようなものが出てきます。特にすねや腰、背中などがよく乾きます。
秋から冬にかけて乾燥が酷くなると、多くのかたたちが肌の乾燥を感じるようになり、白い粉をふいた状態になるかたもいらっしゃいます。
乾燥が進むとかゆみが出てきます。かゆみの度合いは患者さまによって異なりますが、酷くなるとかゆみも強くなっていきます。
かゆい部分をかくと、さらに皮膚の表面が傷つき、水分が逃げやすくなり、乾燥と炎症が悪化します。まさに「かゆい → かく → もっとかゆくなる」という悪循環が起きるのです。
特にお子さまや赤ちゃんではかゆみを我慢できず、かきむしり悪化させてしまうことも多いため、この症状が出ている時は、かゆみ対策も必要となってきます。
また、入浴後や寝る前など体が温まると、かゆみが強くなるのが特徴です。そのため、かゆみ対策も重要な課題です。
かくことで皮膚の表面が傷つき、赤くなったり小さな湿疹が出てきます。
炎症が進むと、ひび割れやかさぶたができ、見た目にも痛々しくなります。
さらに、上記でもお伝えしましたが、かくことによりさらに赤みと炎症は酷くなりかゆみも増すという負のループがおこります。
そのため、かゆみや炎症が酷くなる前に適切な治療やスキンケアを行うことが大切です。
症状が重くなると、皮膚が割れたり、滲出液(しんしゅつえき:透明や黄色の液)が出ることがあります。
小さなお子さまや、家事をおもにされるかたは肌が弱った状態になるため感染を引き起こしやすくなります。
また、感染すると肌の状態はさらに悪化し、酷いかたでは痛みを伴うこともあります。
それ以外にも、放置しておけば慢性的な皮膚疾患になってしまう可能性もあるため、この状態になった場合には、当院までお早めにご来院ください。
長く続くとかゆみを繰り返すため、皮膚が厚く硬くなり(苔癬化:たいせんか)、色が少し黒ずんで見えることもあります。
この段階では自然には治りにくく、専門的な治療が必要になります。当院では、皮膚科専門医が一人ひとりのかたに合わせた治療を行います。
慢性化になる前に治療を行いましょう!
皮脂欠乏性湿疹は、基本的に皮脂の分泌が少ない場所や摩擦・乾燥を受けやすい部分にできやすい湿疹です。そのため、以下の部位によくできやすくなります。
最も多い部位です。
腕の外側は摩擦が多く、衣服との接触や紫外線の影響を受けやすいです。特にひじや二の腕も年齢を経るに従い、乾燥しやすくなります。一方、内側(脇の下など)は汗腺が多く湿っているため、湿疹は出にくい傾向にあります。特に中高年では、上腕の乾燥とともにかゆみを訴えるケースが増えています。
※この部位は意外と保湿クリームを塗り忘れる、または塗る量が少なくなる傾向があります。
当院での診断は、皮膚科専門医による視診と問診で行われます。
皮膚表面の乾燥状態、発疹(ほっしん)の分布、※1掻破痕(そうはこん)の有無などを確認し、生活習慣や発症時期、かゆみの程度を総合的に判断します。
鑑別すべき疾患としては、以下のようなものがあります。
患者さまによっては、必要に応じて皮膚生検や血液検査を行うこともあります。
※1:掻破痕(そうはこん)とは、皮膚をかきむしることでできたひっかき傷のことです。かさぶたのような状態で、血管から滲み出た血液や液体、膿(うみ)などが乾燥して固まったものです。
皮脂欠乏性湿疹(ひしけつぼうせいしっしん)の治療は、「乾燥を防ぐこと」と「炎症を抑えること」の2本柱で行います。
皮脂欠乏性湿疹の治療の基本は保湿です。保湿剤を毎日、十分量塗布して皮膚のバリア機能を補い、水分蒸発を防ぎます。
皮脂が減っている状態では、まず人工的に保湿剤を塗ってバリアを作りそれを維持することが必要です。そのため、毎日継続することが最も重要です。
主な保湿剤には以下の種類があります。
使い方のポイント
※冬の乾燥が厳しい時期には、1回だけの塗布では乾燥を防ぎきれない場合が多いです。
※皮脂欠乏性湿疹を未然に防ぐことも大切です。そのため、かゆくなる前に塗りましょう。
乾燥が進んで炎症が起きている場合は、外用薬(塗り薬)が使われます。当院では、一人ひとりの患者さまに合わせた治療を行います。そのため、必ずこれらの薬が処方されるわけではありません。
炎症を鎮める最も効果的な薬です。「医師の指導のもとに」ステロイド剤を使用するのは危険ではありません。患者さまによってはステロイド剤を使用いたします。
医師の指示通りに塗る範囲と回数を守ることが大切です。
医師炎症が長引く場合や、顔などステロイドを使いづらい部位には、タクロリムス軟膏(プロトピック)などが使われることもあります。
医師これは免疫反応を抑えて炎症を沈める薬で、長期的に使いやすいのが特徴です。
医師※この場合にも、医師の指導のもとに使用すれば危険なものではありません。
かゆみが強い場合には内服薬でかゆみを和らげ、かく行為を減らすことができます。一般的に「アレグラ」「クラリチン」「アタラックスP」などが処方されます。最近では眠気の少ないお薬もあり、日中も使用できます。ご要望などがあれば医師にお申し出ください。
かき壊して「じゅくじゅく」している場合や、二次感染を起こしている場合には、抗菌薬の外用薬(フシジン酸軟膏など)や内服抗生剤が使われます。また、真菌(カビ)が関係している感染症の場合には、抗真菌薬を使うこともあります。
皮脂欠乏性湿疹では、薬だけでなく、日常生活の工夫や見直しが再発を防ぐカギです。ここでは、もっとも大切なポイントをお伝えしていきます。
※保湿に必要な皮脂まで取り去ってしまうと悪化します。
できるだけ刺激にならないよう、お肌に優しい素材のものを選んでください。
※冬季は油分や保湿成分の高い保湿剤を塗るなど、季節やお肌の状態に合わせてスキンケアを変えることが大切です。
お子さまはお肌のバリアが弱く、高齢者は皮脂腺と汗腺の働きが低下しているため、再発しやすいです。
ポイント:
補足:
※乾燥は気にしないという高齢者のかたがいらっしゃいます。しかし、そのままではドンドン悪化してしまいますので、早めの対策が必要ということを説明してあげて下さい。
皮脂欠乏性湿疹は、皮脂や水分が減って皮膚のバリア機能が弱まり、乾燥やかゆみ、炎症を起こす湿疹です。
特にすね・腰・背中など皮脂の少ない部位に多く、冬季や高齢者に発症しやすいのが特徴です。
治療の基本は保湿で、入浴後すぐに保湿剤を塗り、炎症が強い場合はステロイド外用薬や抗ヒスタミン薬を併用します。
生活面ではぬるめの入浴、低刺激の石けん、加湿と綿素材の衣類が重要です。日々の保湿習慣が最大の予防であり、早めのケアが再発防止につながります。
お肌がかゆい、赤みがあるなどお肌のトラブルはお早めに当院までご連絡ください。
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日/祝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
11:00-14:00 | ● | 休 | ● | ● | 休 | ▲ | ▲ |
16:00-21:00 | ● | 休 | ● | ● | 休 | ▲ | ▲ |
▲ 10:00-14:00 16:00-20:00
※当院は完全予約制ではございません。初診の方もご予約なしでの診察可能です。
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
11:00-14:00 | ● | ● | ● | ● | 休 | ▲ | 休 | ▲ |
16:00-21:00 | ● | ● | ● | ● | 休 | ▲ | 休 | ▲ |
▲ 10:00-14:00 16:00-20:00
※当院は完全予約制ではございません。初診の方もご予約なしでの診察可能です。
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日/祝 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
11:00-14:00 | ● | 休 | ● | 休 | ● | ▲ | ▲ |
16:00-21:00 | ● | 休 | ● | 休 | ● | ▲ | ▲ |
▲ 10:00-14:00 16:00-20:00
※当院は完全予約制ではございません。初診の方もご予約なしでの診察可能です。