皮膚に「なんだかブツブツできて、すごくかゆい」「かいてしまってなかなか治らない」…そんな経験をお持ちの方に向けて、今回は「痒疹(ようしん)」という皮膚疾患について、原因・症状・治療・日常のケア・再発予防まで、分かりやすく解説します。
かゆみという、一見「当たり前」とも思える症状が、実は皮膚だけでなく生活の質に大きな影響を与えていることがあります。しっかりと理解することにより、症状の早期発見・対処・回復のサポートになります。
「痒疹(ようしん)」とは、かゆみを伴う小さな盛り上がり(丘疹:きゅうしん)やしこり(結節)が皮膚にできて、それが慢性で再発性の経過をたどることが多い皮膚疾患です。
皮膚科のガイドラインでは、「かゆみを伴う孤立性丘疹(こりつせいきゅうしん)を主徴(しゅちょう)とする反応性皮膚疾患(はんのうせいひふしっかん)」などと定義されています。
本来、皮膚が刺激を受けると痒み・赤みが出ることがありますが、痒疹(ようしん)ではその刺激・かゆみ・掻く(かく)行為が悪循環となって、症状が長く、治りにくくなってしまうケースが多くみられます。
また、単に一過性というより「慢性に」「再発を繰り返す」経過をたどることが多いため、生活上の工夫や継続的なケアが重要です。
※参照URL:慢性痒疹診療ガイドライン
「痒疹(ようしん)」といわれても、実際にはいくつかのタイプがあります。ガイドライン等では以下のように区別されています。
※参照URL:Exploring Potential Treatment Needs of Japanese Patients with Prurigo Nodularis
痒疹によるかゆみで背中をかいている様子のイメージ写真
痒疹には以下のような症状があらわれることが多いです。
まず最も重要なのが「かゆみ」です。
赤いブツブツ・しこりが出現し、それがかゆいために掻いてしまうことが多く、掻けば掻くほどかゆみが続いたり、症状が悪化したりという悪循環に陥ることがあります。
「かゆみ→掻く→さらに皮膚が刺激され、かゆみが増す」というループが、慢性化の背景にあると考えられています。
皮膚に「小さな盛り上がり(丘疹:きゅうしん)」や「硬めのしこり(結節)」が見られます。特に結節性タイプでは、硬さを伴った結節が腕や脚、背中などに散在することがあります。
また、掻くことで皮膚が厚くなったり、ざらざら・ゴワゴワした感じ(苔癬化(たいせんか)という状態)になったり、色素沈着を起こしたりという変化もみられます。
以下のような場所に出やすいです。
時には顔・首なども(特に子どもでは)このような“掻きやすい/刺激を受けやすい”部位に症状が出ることが多いのが痒疹(ようしん)です。
痒疹(ようしん)では、掻き続けることで以下のような皮膚の状態や変化が出てきます。
特にかゆみによる生活の質(Quality of Life:QOL)の低下が問題視されています。
このように「かゆみ」だけといって侮ってはいけないのが痒疹です。
かゆみが続くようであれば、まずは当院までご連絡ください。
早期発見・早期治療がこの皮膚疾患のカギとなります。
※参照URL:Exploring Potential Treatment Needs of Japanese Patients with Prurigo Nodularis
痒疹(ようしん)の原因には、皮膚への刺激やストレス、免疫の乱れなど、さまざまな要因があります。痒疹の原因には「これ!」と決まったものがあるわけではなく、いくつかの要因が絡み合って発症・継続・慢性化していくと考えられています。以下、わかりやすく整理します。
衣服の摩擦、虫刺され、汗、乾燥、温度変化など、皮膚に対しての“刺激”がきっかけになることがあります。
たとえば「虫に刺されたり、汗をかいて痒くなったり」→掻いてしまった→その跡が残ってブツブツになったというループが痒疹になる場合が多いです。
こうした外的刺激が皮膚のかゆみを引き起こし、悪化させることがあります。
アトピー性体質(アトピー性皮膚炎などの既往)やアレルギー体質の方に出やすくなります。
また、内臓疾患(腎機能・肝機能・糖尿病など)が背景にあることもあります。
実際、痒疹(ようしん)は中・高齢者で肝臓、腎臓、悪性腫瘍(あくせいしゅよう)などの既往歴をもったかたに多く発症しています。
そのほか、乾燥肌・皮膚のバリア機能低下も影響してます。
例えば、乾燥して刺激を受けやすくなると、かゆみ→掻くという流れが起こりやすくなります。
かゆみを感じる神経が過敏になり、皮膚の炎症や傷を掻くことでその神経刺激がさらに増強されてしまいます。
「かゆみ→掻く→刺激→かゆみ」いわゆる「かゆみ‐掻破(そうは)ループ」が慢性化するメカニズムが考えられています。
さらに、掻いたことで皮膚が厚くなり、掻き跡が残りやすくなり、その部位がまたかゆみを誘発(ゆうはつ)するという悪循環もでてきてしまいます。
痒疹(ようしん)は「刺激+体質+かゆみ神経反応」が複雑に絡み合って発症し、掻くという行為が継続を助長することにより、慢性化・治りにくくなる疾患と言えます。
そのため、治療にあたっては「かゆみを減らす/掻かないようにする/皮膚を守る」ことが非常に重要です。
症状が出たとき、どのように医師が診断をするか、受診する際に気を付けておきたいポイントを整理します。
まず、皮膚科医師が視診(皮膚の状態・丘疹(きゅうしん)・結節の形・分布・掻き壊しの有無)を行います。
その際にかき跡、苔癬化(たいせんか)の有無、色素沈着の有無などが確認されます。
また、問診として以下のような点が確認されることが多いです。
※患者さまによって問診は異なりますので、ご了承ください。
必要に応じて、以下のような検査が行われることがあります。
症状が慢性かつ難治の場合、内科的疾患(腎不全・肝障害・悪性腫瘍など)の存在も検討されることがあります。
痒疹の治療は「かゆみを抑える」「掻くのをやめる」「皮膚を守る」という3本柱が基本です。以下に、具体的な治療法をわかりやすく整理します。
ナローバンドUVB(紫外線B)などを使用して、皮膚のかゆみ神経や炎症を和らげる治療が行われることがあります。慢性・難治例に有効との報告もあります。
回数・頻度・照射部位などは医師と相談の上で(皮膚の色・既往・他疾患の有無を踏まえて)決められます。
背景に肝疾患・腎疾患・糖尿病・アトピー体質などがある場合、それらを適切に治療・管理することが、痒疹の改善につながることがあります。
日常的なスキンケア・刺激回避・保湿などが、薬物療法と並び非常に重要な役割を担っています。
この皮膚疾患に関しては、患者さま側の症状の実感(「夜かゆくて眠れない」「仕事に支障出る」など)と医師側の認識(「皮疹の数/あとの硬さ」など)にずれがあることが指摘されています。
当院では一人ひとりの患者さまに合わせた診察・治療を行います。何かあれば当院までお早めにご連絡ください。
痒疹(ようしん)では治療と並行して、日常生活でできる“セルフケア”が症状の改善&再発予防に大きな効果を持ちます。ここでは、実践しやすいポイントをご紹介いたします。
かきたくなったら、爪を短く切っておく、手袋や薄手の綿手袋を寝るときに使うなど「かきにくくする」仕組みを作ると良いです。
かゆみが強い部位には、冷たいタオルや保冷剤(タオルで包んで)で“冷やす”ことでかゆみが改善されます。
掻いてしまったら→傷になっている場合は、清潔にして保湿・軟膏を早めに使用して「かさぶた・色素沈着・硬化」にならない・長引かないように心がけましょう。
保湿をこまめに行いましょう!
特にお風呂上がり、就寝前、乾燥を感じたらすぐ保湿剤を使いましょう。
綿素材など肌に優しい素材を選ぶ。摩擦・チクチクする繊維(ウール・合成繊維)を避ける。
睡眠時・日中ともに汗をかいたらこまめに着替える、湿気・蒸れを避ける。
冬場・乾燥しやすい時期は加湿器を使う、湿度50%前後を目安に。
暖房・冷房による乾燥・温度差にも注意。
ストレスがかゆみを誘発・増悪(ぞうお)させることがあります。深呼吸・軽いストレッチ・趣味でリラックスする時間を持つことが有効です。
睡眠不足・不規則な生活もかゆみを強める原因になります。なるべく睡眠をとるように心がけましょう。
食生活も皮膚の状態に影響します。
バランスの良い食事を基本に、アルコール・辛いもの・刺激物(辛味・香辛料)がかゆみを増すという自覚がある場合は控えめにすることも検討しましょう。
どの年齢でも発症しうる皮膚疾患ですが、特にお子さまと高齢者のかたには注意すべき点があります。
お子さまでは、虫刺されをきっかけに痒疹(ようしん)になるといったケースが比較的多く、またアトピー体質を背景に持つことがあります。
かき壊すと二次感染(細菌感染)などを起こしやすいため、早めの皮膚科受診・保湿・刺激回避が大切です。
親御さまは「かかせないようにどうサポートするか」「保湿・衣服・環境を整えるか」が大切なポイントになってきます。
皮膚のバリア機能が低下し、乾燥・かゆみを起こしやすい傾向があります。
他の慢性疾患(腎・肝・糖尿等)を抱えていることも多いため、皮膚の症状だけでなく全身の健康状態もあわせて確認する必要があります。
皮膚が薄くなっている場合、かき傷から出血・瘢痕(はんこん=傷跡)・色素沈着が残りやすいため、早めの対処が望まれます。
痒疹(ようしん)は、ただ「治ったら終わり」というわけではなく、再発を繰り返す可能性があるため「長期的なケア」が非常に重要です。
症状が落ち着いても、保湿・刺激回避・衣服・環境といったスキンケア習慣は継続する。
季節の変化(特に冬の乾燥・夏の汗・湿気)・ストレス・生活リズムの乱れなど、かゆみを誘発・増悪させる要因に注意。
定期的に皮膚科を受診し、状態をチェックしてもらう。掻き続けてしまって皮膚が硬くなってきた、色が残ってきた、という変化が出てきたら早めに医師へ。
治療を途中でやめてしまわず、「医師と定めた治療計画+セルフケア」を継続する姿勢 が大切です。
この疾患は医師とのチームワークで治していくことが大切です。そのため、自己流に頼らず医師の指導の元にしっかりと治療を進めていきましょう。
症状が軽くなったときでも、掻かないように意識を保つことが重要です。掻き始めると 再び悪循環に入ることがあります。
心身の健康(睡眠・ストレス・食生活・運動)を含めた総合的なケアが、皮膚の良好な 状態につながります。
もし「かゆみがひどくて生活に支障がある」「治療してもなかなか改善しない」と感じ る場合には、医師に相談し治療の見直しをしてみましょう。
痒疹(ようしん)は、「かゆみを伴う丘疹・結節」が出て、かくことによってさらに悪化・慢性化してしまう皮膚疾患です。
発症の背景には、刺激・体質・神経・免疫など複数の要因が絡み合っており、また、かくという行動そのものが悪循環を生むため、治療だけでなく日常のケア・環境調整・生活習慣の見直しが不可欠です。
治療としては外用薬・内服薬・光線療法・併存(へいぞん)疾患治療などがあり、患者さま自身が「どこまでかゆみを抑えたいか」「どんな生活を送りたいか」を医師と共有することで、より良い結果が期待できます。
特に、保湿・かかない工夫・環境・生活習慣の維持が、再発予防と治療効果の維持において非常に重要です。
もし「かゆくて眠れない」「治療してもよくならない」「毎日のかゆみで参っている」と感じる場合は、あきらめずに当院皮膚科医と相談し、治療プランを改めて検討していきましょう。
医療法人社団涼美会理事長・形成外科医:関口 知秀
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※当院は完全予約制ではございません。初診の方もご予約なしでの診察可能です。
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